アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ)の特徴、使い方や注意点、作用機序、指導のポイント

AD/HD治療薬

ここでは、注意欠如・多動症(AD/HD)の治療薬として使用される、アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ)に関する使い方から注意点、指導のポイントなどをご紹介していきます。

基本情報

効能・効果:注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
用法: 18歳未満→1日2回
18歳以上→1日1回又は1日2回
用量
18歳未満: 開始用量1日0.5mg/kg、その後1日0.8mg/kg、さらに1日1.2mg/kgへ増量し、維持量は1日1.2~1.8mg/kg
★増量は1週間以上の間隔をあけ、最大量1日量は1.8mg/kg又は120mgのいずれか少ない量を超えないこと。
18歳以上:1日40mgより開始、その後1日80mgへ増量、維持量は1日80~120mg
★1日80mgまでの増量は1週間以上、その後の増量は2週間以上の間隔をあけて行い、最大用量120mg
Tmax 1hr
半減期 4.1(40mg単回投与)

特徴

  • ノルアドレナリントランスポーターを阻害することにより、ドパミンとノルアドレナリン濃度を上昇させる薬剤
  • 安定した効果を感じられるまでには1から2か月程度かかる(維持量までに時間がかかることもあり)
  • 主な副作用は悪心、食欲減退、腹痛、嘔吐、傾眠、便秘、口渇
  • 重篤な心血管障害には禁忌
  • 中等度以上の肝機能障害では用量調整が必要
  • 内用液とカプセル剤がある

作用機序

前頭前野ではドパミ神経終末上のドパミントランスポーターが少ないため、ドパミンもノルアドレナリントランスポーターを介して再取り込みされると考えられています。アトモキセチンは前頭前野においてノルアドレナリントランスポーターを阻害することにより、ドパミンとノルアドレナリン濃度を上昇させる。

また、アトモキセチンは線条体や側坐核のドパミン濃度にほとんど影響を与えない。

主な副作用

悪心、食欲減退、腹痛、嘔吐、傾眠、便秘、口渇

悪心、食欲減退及び嘔吐の対応としては、食事後すぐに服用や1日1回であれば1日2回で服用することで副作用を軽減することができる可能性がある。

基本的にしばらく服用することで慣れてくる場合が多いが、症状がひどい時は相談しましょう。

注意点

重篤な心血管障害は禁忌
狭心症、心筋梗塞、心不全、心筋症、先天性心疾患等の既往には注意しましょう。

肝機能障害による調節
中等度(Child-Pugh Class B)の肝機能障害の場合、開始用量及び維持用量を通常の50%に減量。
重度(Child-Pugh Class C)の肝機能障害の場合、開始用量及び維持用量を通常の25%に減量となっている。

主な代謝酵素CYP2D6
CYP2D6阻害作用のあるパロキセチンとの併用の際には血中濃度の上昇に注意

指導のポイント

  • 自殺念慮や関連行動、攻撃性や敵意の発現(AD/HDの症状の可能性もあるが)、症状の悪化、幻覚等の精神病性又は躁病の症状が報告されているため、保護者などに注意して観察するように説明する
  • 眠気、めまい等が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないこと
  • 心血管系に対する影響を観察するため、投与開始前や投与期間中は定期的に血圧と心拍数(脈拍数)を測定する必要がある
  • 原薬アトモキセチンには眼刺激性があるため脱カプセルしての服用は避ける
  • アトモキセチン内用液の味は甘く(甘味料)、匂いはラズベリーフレーバー
  • 内用液は飲料や食品と混ぜたり、希釈したりした場合、安全性は確認されておらず、さらに苦味がより強く感じられる可能性がある
  • 瓶包装品のまま交付する場合であれば開封後の使用期限は45日。開封後45日経過製品は服用しないよう説明