レンボキサント(デエビゴ)の特徴、使い方や注意点、作用機序や指導のポイントについて

睡眠薬

レンボレキサント(デエビゴ)はオレキシン受容体のアンタゴニストであり、オレキシンを競合的に阻害するオレキシン受容体拮抗薬です。

本邦ではスボレキサント(ベルソムラ)に次いで2つ目のオレキシン受容体拮抗薬となりました。

オレキシン作動性神経は、覚醒維持にかかわる神経系に広く投射していて、睡眠・覚醒の主要な調節因子と考えられるオレキシンがオレキシン受容体と結合することにより活性化すると考えられています。

オレキシン受容体にはオレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)の2種のサブタイプが存在していて、レンボキサントは両方の受容体を競合的に阻害し、睡眠潜時や中途覚醒時間の短縮させます。

副作用は傾眠、頭痛、倦怠感等が見受けられています。また、特に夜間のふらつきによる転倒には注意が必要です。ベンゾジアゼピン作動薬と比較すると、依存性や反跳現象もなく使用しやすい薬剤となるのではないかと考えます。

個人的には長すぎる半減期が気になるところで、それがどのように影響するのかは注意してみていかなければと思います。

名称の由来は「Day(日中)+Vigor(活力)+Go(ready to go)」から来ているそうです。

今日もデエビゴで行きたいとこです。

【基本情報】

商品名:デエビゴ
英語表記(洋名):Lemborexant

効能・効果:不眠症
用法・用量:成人1日1回5㎎就寝直前
最大用量:1日1回10㎎

Tmax:1.5hr(10mg2週間投与)
半減期:47.4(10mg2週間投与)

腎機能による調整:なし
肝機能による調整:あり
食事の影響:あり
併用禁忌薬:なし
禁忌疾患等:あり

一包化可能か?

デエビゴの製剤の無包装での安定性試験結果です。

条件①:温度・湿度40℃ /75% RH ポリエチレン容器(開放)で3ヵ月間

→外観、類縁物質、溶出性、含量いずれの試験項目においても変化なし

条件②:シャーレ(開放)下でキセノンランプ照射(総照度120万lx・hr以上+総近紫外放射エネルギー200W・hr/m2以上)
→変化なし

これらより、一包化は可能と考えます。

粉砕可能か?

デエビゴの有効成分の安定性試験結果です。

条件①:40℃/75%RH 6ヵ月ポリエチレン袋(二重)
条件②:光20000 lx、30℃/65%RH総照度140万lx・h及び総近紫外放射エネルギー200W・h/m2石英製容器
条件③:30℃/75%RH 1ヵ月遮光ガラス瓶(開栓/密栓)
→いずれにおいても変化なしの結果でした。

デエビゴはフィルムコーティングされているだけで、特殊な薬剤の放出加工はされていません。

以上から、粉砕可能と考えます。

【作用機序】

オレキシンは覚醒を促進する神経ペプチドです。

レンボキサントはオレキシンがオレキシン1受容体およびオレキシン2受容体に結合するのを可逆的に阻害することにより、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させ、睡眠を誘発します。

定常状態となるのは

半減期から考えると、血中濃度が定常状態となるのは8~10日程度かかると考えられます。

睡眠薬が体のなかに常にあり、定常状態となるのも変な感じがしますが、それでも日中の傾眠が見られる人は一部であり睡眠の改善が得られることから、まだ分かっていない作用もあるのではないかと思います。

【主な副作用と対策】

承認時の主な副作用は傾眠(10.7%)、頭痛(4.2%)、倦怠感(3.1%)等となっています。

用量依存的に傾眠の発生率は増加するとされています。

傾眠が見られた場合は中止もしくは減量して様子をみましょう。

また、1-3%未満に浮動性めまい、睡眠時麻痺、異常な夢、悪夢、悪心、体重増加などもあります。

腎機能による調整

重度の腎機能障害患者に本剤を単回投与したとき、レンボレキサントのCmax は、健康成人と比べて5%上昇し、AUC(0-inf)は50%増加した。

重度の腎機能障害のある患者では、本剤の作用が強くあらわれる
おそれがあるため慎重投与とされています。

肝機能による調整

中等度の肝機能障害患者に本剤を単回投与したとき、レンボレキサントのCmax は、健康成人と比べて22%上昇し、AUC(0-inf)は54%増加した。

この結果から、中等度の肝機能障害患者に投与する際は増量せず用量の上限を5mgとされています。

食事の影響

食後投与では、空腹時投与に比べ、投与直後のレンボレキサントの血漿中濃度が低下することがあり、入眠効果の発現が遅れるおそれがあるため、本剤の食事と同時又は食直後の服用は避けることとされています。

相互作用

主な代謝酵素 CYP3A

CYP3Aが主な代謝酵素であるため、相互作用に注意する薬剤は少なくはないです。

併用禁忌:なし

併用注意薬

・CYP3Aを阻害する薬剤
イトラコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、フルコナゾール、ベラパミル等

レンボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを阻害し、レンボレキサントの血漿中濃度を上昇させるおそれがあるため併用注意です。下に添付文書に記載してある報告を載せていますが、AUCとしては3倍近くなり、半減期も2倍になるので、併用時は特に傾眠など副作用の出現に十分に注意する必要があります。

イトラコナゾール
健康成人15例にイトラコナゾール200㎎を1日1回反復投与時に本剤10㎎を単回投与した場合。単独投与時と比較して併用時では、Cmaxは36%上昇し、AUC(0-inf)は270%増加した。レンボレキサントの最終消失半減期(平均値)は、単独投与時及び併用時ではそれぞれ54.4時間及び118時間であった。

フルコナゾール
健康成人14例にフルコナゾール200㎎を1日1回反復投与時に本剤10㎎を単回投与したときの、単独投与時と比較して併用時では、Cmaxは62%上昇し、AUC(0-inf)は317%増加した。レンボレキサントの最終消失半減期(平均値)は、単独投与時及び併用時ではそれぞれ55.4時間及び99.5時間であった。

CYP3Aを誘導する薬剤
リファンピシン、フェニトイン等
本剤の作用を減弱させるおそれがある。
レンボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを誘導し、レンボレキサントの血漿中濃度を低下させるおそれがあります。下の報告を見るとリファンピシンと併用する場合はプラセボと変わらないのではと思う程度まで血中濃度が低下してしまう可能性があります。

リファンピシン
健康成人15例にリファンピシン600㎎を1日1回反復投与時に本剤10㎎を単回投与したとき、単独投与時と比較して併用時では、Cmaxは92%低下し、AUC(0-inf)は97%減少した。レンボレキサントの最終消失半減期(平均値)は、単独投与時及び併用時ではそれぞれ45.6時間及び10.8時間であった。

・中枢神経抑制剤
フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等
レンボキサントとこれらの中枢神経系に対する抑制作用により相乗的に中枢神経抑制作用を増強させるおそれがあるため、慎重に投与することとなっています。下記の報告よりミダゾラムに関しては大きな影響はないと考えます。

ミダゾラム
健康成人28例に本剤10㎎を1日1回反復投与時にミダゾラム2㎎を単回投与したときの
単独投与時と比較して併用時では、Cmaxは13%上昇し、AUC(0-inf)は13%増加した。ミダゾラムの最終消失半減期(平均値)は、単独投与時及び併用時ではそれぞれ4.00時間及び4.21時間であった

・アルコール(飲酒)
アルコール摂取によって血中濃度の上昇、中枢神経の相乗的な抑制作用により精神運動機能の相加的な低下を生じる可能性があります。レンボキサント服用時に飲酒は避けさけましょう。

アルコール
健康成人21例に本剤10㎎を単回投与時にアルコールを併用したとき、相加的な認知機能低下がみられた。また、単独投与時と比較して併用時では、Cmaxは35%上昇しAUC(0-72h)は70%増加した。レンボレキサントの最終消失半減期(平均値)は、単独投与時及び併用時ではそれぞれ33.9時間及び29.9時間であった

禁忌疾患等

・重度の肝機能障害のある患者:レンボレキサントの血漿中濃度を上昇させるおそれがあるため

妊婦・授乳婦への影響

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔 妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。〕
授乳中の婦人には投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。〔 授乳ラットに投与したとき、レンボレキサント及びその代謝物は乳汁中へ移行することが報告されている。〕

これは添付文書上の決まり文句です。新し情報が入れば更新したいと思います。

使用上の注意点など

・自動車運転能力に対する影響
軽微な運転能力の低下は認めるものの、有意な影響はなかったとされています。ですが、注意しましょう。単回投与で投与4時間後と8時間後で注意力の低下が認められたというデータあるので、半減期の長い薬剤であることから、連日投与した場合は注意力の低下が日中にも見受けられる可能性はあるのではないかと考えています。

・夜間及び翌朝の平衡機能及び認知機能等に対する影響
ふらつきや、注意力などの低下が認められています。(しかも単回投与のデータです)早朝や、夜間は転倒などに十分に注意していただきたいところです。

・注意が必要な既往
ナルコレプシー又はカタプレキシーのある患者( 症状を悪化させるおそれがあるため)
軽度及び中等度の肝機能障害のある患者( レンボレキサントの血漿中濃度を上昇させるおそれがあるため)
重度の腎機能障害のある患者( レンボレキサントの血漿中濃度を上昇させるおそれがあるため)
脳の器質的障害( 作用が強くあらわれるおそれがあるため)
中等度及び重度の呼吸機能障害(使用経験がなく、安全性は確立していないため)

指導のポイント

・用法用量の説明 1日1回 就寝直前に服用
実際は先生によっては同効薬であるスボレキサント(ベルソムラ)を寝る数時間前に服用した方が良いという場合もあるので、レンボキサントもそのように使用される場合もあるかもしれません。ただ、そのような使い方の安全性の確認はされていません。

・併用薬の確認
CYP3Aを阻害する薬剤との併用により、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠等の副作用が増強されるおそれがあり、CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)との併用の場合1日1回2.5㎎とすることとなっています。

・肝機能の確認
中等度肝機能障害患者では、レンボレキサントの血漿中濃度が上昇するため、1日1回5㎎を超えないこととし、慎重に投与することとなっています。なかなか肝機能の確認は難しいですが、肝機能障害の既往などの聴取は必要でしょう。

タイトルとURLをコピーしました