昔からの成分で排便促進するモビコールの使い方、作用機序や指導のポイント

下剤

モビコール内用配合剤はマグコロール4000というポリエチレングリコールと電解質(塩化ナトリウム/炭酸水素ナトリウム/塩化カリウム)を配合した慢性便秘治療薬です。

成分は昔からあるものばかりで、この薬を見たときはこの成分で今から新発売とはよく考えたものだと思うと同時に、薬に対する安心感をもったことを覚えています。

モビコールはポリエチレングリコールの浸透圧効果によって水分を引きつけることで腸管内の水分量を増加させ、保持し、便中の水分量の増加、便容積の増大をもたらすことによって、用量依存的に便の排出を促進します。

電解質はなぜ入っているかと言うと、腸管内の電解質バランスを維持し、糞中水分の浸透圧を適切なレベルで保持するために配合されています。

ポリエチレングリコールを主成分とした製剤で、モビコールに関して
モビコールは海外のガイドラインにおいて慢性便秘症の治療薬として推奨されている。

日本の慢性便秘のガイドラインでは酸化マグネシウムなどのマグネシウム製剤が第一選択薬として推奨されていますが、海外の多くのガイドラインでは、モビコールのようなポリエチレングリコール製剤が推奨されています。

慢性便秘症に対して小児(2歳以上)にも適応があり、幅広い層に使用できる薬剤で、溶解して服用し、適切な硬さの便がみられるまで適宜増減が可能です。

少し前置きが長くなりましたが、この記事ではそんなモビコールについてのさまざまな情報をまとめています。

【基本情報】

効能・効果:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)

用法・用量
2歳以上7歳未満の幼児:初回用量1回1包1日1回、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量4包/日(1回量2包まで)

7歳以上12歳未満の小児:初回用量1回2包1日1回、 症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量4包/日(1回量2包まで)

成人及び12歳以上の小児:初回用量1回2包1日1回、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口投与、最大投与量6包/日(1回量4包まで)

増量の仕方はどの年齢においても2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量として2包まで

腎機能による調整:なし
肝機能による調整:なし
食事の影響:なし
併用禁忌薬:なし
禁忌疾患など:あり
Tmaxや半減期:マクロゴール4000は経口投与時にほとんど吸収されず、消化管内で直接作用するため、該当しない。
味:わずかに塩味
効果発現時間:2日程度

調製方法は?水以外にも溶解できる?お湯でもいい?

1包あたりコップ1/3程度(約60mL)の水に溶解。溶解後は速やかに服用します。

味などが気になって服用しにくい場合は、他の飲料に溶かして服用することもできるとされています。英国NICEの治療ガイドラインでも好みの飲料に本剤を溶解し服用しても良いとされています。

ただ、お湯での溶解は避けましょう。マグコロール4000の特異な匂いがする可能性があったり、炭酸水素ナトリウムが、65℃以上の溶液中で速やかに分解してしまうようです。

溶解後の保存はできる?1回量を飲み切ることができなかった場合など

1度にすべて服用しきれない場合など、やむを得ず保存する必要がある場合は、冷蔵庫に保存し、できる限り速やかに服用することとされています。数回に分けて服用してもかまいませんが、1日あたりの服用量をその日中に飲みきるようにしましょう。

1包を62.5mLの水に溶解した液の7日間の安定性試験では、いずれも物質としては安定となっていますが、細菌繁殖なども考慮すると、やはりその日のうちに飲み切るのがよいでしょう。

分割しての使用はできる?

マクロゴール4000、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウムの4種類の粉末が均一に配合されていますが、それぞれの粒の大きさ(粒子径)が異なることから、輸送中の振動などによって不均一になることが予想されます。そのため、分割しての使用は避けましょう。

溶解せずに粉のまま飲んでもいい?

主成分のマクロゴール4000が保持した水を大腸に届けることが大切なので、必ず1包あたり約60mLの水で溶解してから服用しましょう。また、試してはいませんが、水分を引き付ける物性のため、そのまま飲むと口に貼りつくのではないかと思います。

さらに、溶解しないで服用することは、承認外の用法で有効性や安全性の検討もされていません。

相互作用

薬剤との配合変化は検討していないため、モビコール®の溶解液に他の薬剤を混合したり、溶解液で他の薬剤を服用することは避けましょう。

【作用機序】

高分子量化合物であるマクロゴール4000を主要な有効成分として含有しています。 マクロゴール4000など高分子量のポリエチレングリコール製剤を投与すると、浸透圧によって腸管内の水分量が増加することで、便中水分量が増加して便が軟化します。

もちろん、便容積も増大するため、生理的に大腸の蠕動運動も活発化されます。

こうして、用量依存的に排便が促されるわけです。

電解質(塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム)がなぜ入っているかと言うと、腸内の電解質バランスを維持し、便中の浸透圧を適正なレベルに保持するためです。主な作用物質ではなく補助的に入っているんですね。

主な副作用と対策

下痢、腹痛、腹部膨満、腹部膨満が主な副作用です。

腹痛や下痢、その他の症状に応じて減量、休薬又は中止を考慮します。

腎機能や肝機能による調整

健康成人にポリエチレングリコール3350と電解質を消化管洗浄に用いたとき、血漿及び尿中ポリエチレングリコール3350を測定(ポリエチレングリコール3350の測定下限値は10μg/mL)したが、血漿中に検出されず、尿中に投与後12時間で投与量の約0.04%が排泄された。

という報告や、マクロゴール4000は経口投与時にほとんど吸収されない物質であることから、調整の必要はないと考えられます。

食事の影響

食事の影響に関する報告はなく、食事とのタイミングに関する制限及び服用タイミングに関しては特に設定されていません。

そもそも、マクロゴール4000の物理化学的性質によって高い浸透圧効果を有し、消化管内に水分を保持する薬剤であるため、食事による影響は特に考える必要はないでしょう。

食物があろうがなかろうが、マクロゴールの浸透圧によって一定量の水分が引き付けられ、大腸に運ばれると考えられることから、服用のタイミングに関わらず効果が期待できます。

妊婦・授乳婦への影響

臨床的にはほとんど吸収されないことから全身曝露は無視できるため、妊娠中の影響はないと考えられており、妊娠中に使用できるとされています。また、動物実験においても催奇形性は認められていません。

同様の理由から母乳への影響もないと考えられます。

ただ、妊娠中および授乳中の投与に関しての安全性は確立していないため、添付文書では下記の決まり文句が記載されています。

⑴妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合
にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
⑵授乳中の投与は、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。

効果発現時間

国内の臨床試験において、成人も小児も初回自発排便発現までの日数の中央値が2.0日であるとのことから、効果発現時間は2日程度と考えると良いでしょう。ただ、2日経っても出ないからと焦る必要もないと思います。実際に2日よりも時間のかかる人もいますし、継続投与によって便中の水分を適正な水分量に保ち続けることが重要です。

指導のポイント

1包あたりコップ1/3程度(約60mL)の水に溶解。溶解後は速やかに服用すること

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