統合失調症とはどんな病気?治療から関わり方や家族にできることまとめ

疾病と薬物療法

本記事では統合失調の概説から診断や治療法、一般的なかかわり方、家族としての関わり方、社会的なサポートに関してお話します。

統合失調症とは

幻覚・妄想といった精神病症状、自我障害、意欲や感情の障害、認知機能の障害など様々な症状が複合してみられる慢性疾患です。

人と関わりながら家庭や社会生活を営む能力の低下や、自分の感覚や思考、行動が他の人とは違っていることを自分で振り返って考えたり、そうした変化が病気によって生じているという意識を持つのが難しく、病識を持つことが難しいのも特徴の一つです。

詳細な原因は不明ですが、何らかの脳内の情報伝達に変化が起こることで、様々な情報処理能力に問題が起こることによって症状が出現していると考えられています。

生涯有病率は0.7~0.8%程度と1000人に7~8人発症します。だいたい100人に1人がかかると考えると、決して特殊な病気ではないことが分かります。

男女差、人種差などはありません。好発年齢は10~20代で、20歳前後の15~30歳、ピークは20~25歳ぐらいの青年期と言われています。幅広い年代に認められますが、40歳ぐらいまでの発症がほとんどで、高齢での発症はかなり稀です。

治療はお薬や精神科リハビリテーションなどを行います。治療の主な目的は症状を安定させ、日常生活可能な状態にすることが中心となります。「根治」することではなく、病気がありながらも症状とうまくつきあい、社会生活をうまく営めるよう「寛解」を目指すわけです。

適切な治療を行うことで、50~60%の方は社会復帰可能となってきている一方で、慢性・難治化例もある統合失調症は、およそ100人に1人弱の人がかかるといわれています。早期に発見して適切な治療を実施すれば、大部分の患者さんの症状は改善し、社会復帰も可能といわれています。

統合失調症の発症成因

統合失調症の成因を説明する仮説は複数ありますが、完全には解明されていません。

①神経発達論的成因仮説
一卵性双生児研究において一致率が高い(30~50%)ことから遺伝的要因と環境的要因の両方が発症に関与しているとし、神経発達の障害により統合失調症になりやすさ、脆弱性が形成され、心理社会的なストレスにより統合失調症が発症するとの考え方です。

②ドパミン仮説
ドパミンD2受容体の関与。ドパミンの過活動や低下が要因であるとの考えです。この考えに基づき、統合失調症の治療薬である抗精神病薬が開発されてきました。

統合失調症の発症要因

脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれることが関係しているのではないかといわれていて、大きなストレスがかかることも関係します。

遺伝については、統合失調症の場合、一卵性双生児の1人が発症しても、もう1人の発症リスクは30~50%となっていて、遺伝だけで決まる病気の発症は一卵性双生児では100%一致することから、必ずしも遺伝だけの問題ではないことが分かります。

統合失調症患者の家族は統合失調症になりやすいかどうかについては、発病する確率は一般に比べてやや高くなりますが、糖尿病や高血圧も同様ですので、強く気にする必要はないでしょう。

育て方が悪かったと自分を責め、悩む方もいると思いますが、親の育て方による影響は大規模な研究報告から否定的であると考えられています。

それよりも、発症してからの家族の接し方が回復に大きく影響するため、適切な対応を学ぶことが大切です。

統合失調症の発症には、環境を含めた多くの要素が関与しており、遺伝や家族であることや育て方のみによって引き起こされるものではありません。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は大きく「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに分けることができます。

陽性症状:幻覚、妄想、思考障害、行動異常など

陰性症状:感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如、自閉(社会的引きこもり)など

認知機能障害:記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下など

統合失調症の診断基準

精神疾患の診断基準には、世界保健機関(WHO)の「ICD-10(国際疾病分類第10版)とアメリカ精神医学会の「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)がありますが、多くの国の臨床現場の診断には「DSM-5」が標準的に用いられ、日本でも精神疾患の診断基準では「DSM-5」が主流です。ですので、ここでは「DSM-5」の診断基準のみご紹介します。

DSM-5
A. 以下のうち2つ以上のそれぞれの症状が1ヶ月(治療が成功した場合はより短い期間)ほぼ常に存在する。これらのうち、少なくとも1つは(1)か(2)か(3)である

(1)妄想
(2)幻覚
(3)まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)
(4)ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
(5)陰性症状(感情表出の減少や意欲の欠如)

B. 仕事、対人関係、自己管理などの面で、1つ以上が病前の水準より著しく低下している(小児期や青年期の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)

C. 症状が6ヶ月以上持続している

D. 統合失調感情障害、抑うつ障害または双極性障害の合併がない

E. 薬物や医薬品などの物質、または他の疾患によるものではない

F. 自閉スペクトラム症や小児期発症のコミュニケーション症の病歴がある場合、顕著な幻覚や妄想と、上記B~Eの症状が少なくとも1ヶ月(治療が成功した場合はより短い期間)続いた場合のみ診断する

統合失調症の治療

薬物療法と心理社会的治療を並行して行います。

薬物療法

統合失調症の根本的な原因はまだ解明できていないものの、脳内のドーパミンという物質による情報が過剰になったり、不足していたりと、適切な量の情報が伝わらないことで症状が出ていることは分かってきているため、そこに対して抗精神病薬といわれる分類のお薬を使い、症状の緩和を目指します。

抗精神病薬は、定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬とに分けられます。

定型抗精神病薬(従来型)
主に幻覚・妄想や考えをまとめられないといった陽性症状といわれる症状に効果があります。

非定型抗精神病薬(新規)
陽性症状に効果があり、副作用の錐体外路症状(手がふるえる、体が硬くなる、など)が少なく、陰性症状(感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如など)に対する効果は定型抗精神病薬よりも高いといわれています。また、認知機能障害への効果も期待できます。

心理社会的治療

精神療法、心理教育、リハビリテーションがあります。

精神療法には、治療の基本となる支持的精神療法、妄想や幻聴などへの対処を身に付ける認知行動療法、グループディスカッションを通じて自分の病気を見つめ直す集団精神療法などがあります。

心理教育は、病気の症状や原因、治療法などについて正しい知識を学び、病気に対する理解を深め、病気との付き合い方や前向きに治療に取り組む姿勢を身につけることができます。

本人だけでなく家族を対象にした心理教育もあり、「家族教室」などと呼ばれます。病気に対する理解と本人への接し方やサポート方法などを学んでいきます。

リハビリテーションには、作業療法、デイケアや生活技能訓練(SST)があり、病気の症状いよる生活のしづらさを改善し、安定した生活を送れるようにすることを目的に行います。

統合失調症の病気の経過と症状

統合失調症は病気の経過により、前兆期・急性期・消耗期(休息期)・回復期に分けられ、それぞれの病期で特徴的な症状が認められます。

前兆期
眠れない、音に敏感になる、焦りの気持ち、気分の変わりやすさ、過労・睡眠不足に注意が必要です。

急性期
不安になりやすい、眠れない、幻聴、妄想(内容は被害的なものが多い)が見受けられます。
幻覚や妄想など不思議な体験をするため何かが変だと感じながらも、自分が病気だと思うことができず、他人から見ておかしな行動をすることがあります。また、周りの出来事に敏感になり、不安や緊張を強く感じたりします。睡眠、休息、安心感が大切となります。

消耗期(休息期)
幻覚や妄想などの目立った症状は少なくなりますが、眠気が強い、体がだるく引きこもりがち、意欲がない、元気がなくなったり、やる気が起こらなくなったりします。これは、急性期に心と体のエネルギーをたくさん使ってしまったことが原因と考えられていて、お薬を飲み続けながら、ゆっくりと十分に休むことが必要です。寝時間は規則正しく、焦らず無理は禁物です。

回復期
少しずつ元気が出てきて心も体も安定しゆとりがでてきます。周囲への関心も増加してきますが、焦らずにゆっくりと生活の範囲を広げていきましょう。リハビリテーションなどを行い、体力を作りを行うことも大切です。症状が改善したことで服薬を自己中断し再発することが非常に多いです。再発予防のために薬を忘れずに飲むことが引き続き大切となります。

統合失調症患者が感じていること

もともと脳には、様々な情報を整理するための「フィルター」のようなものがありがあり、自分に必要な情報だけをキャッチして不要な情報は省く働きをしています。

しかし、そのフィルターが正常に働かなくなると、不要な情報がどんどん流れ込んできて収拾がつかなくなり、幻覚や妄想、不眠、集中力の低下などの症状が現れやすくなると考えられています。

統合失調症では、この脳内のフィルターが正常に働かず情報整理が困難になります。そうして、実際の視覚や聴覚で捉えられる情報ではない幻視や幻聴などの症状が現れます。

そして、幻覚や妄想により、自身が危険にさらされているという認識が強まると自分の身を守ろうと必死になり、周囲の人を拒否したり、攻撃的になったり、危険を遠ざけようと閉じこもってしまったりすることもあります。

対人関係では、あいさつができない、複雑な話をするのが難しく話を続けられない、相手の気持ちを察したり間をとることが苦手になる、断ったり秘密にしたりすることが苦手になるなどのコミュニケーションを円滑にとることが難しくなります。

仕事や家事でも、集中力や注意力を持続できない、疲れやすく休息が必要になる、チームワークやスピードを必要とする作業が苦手になる、細かい複雑な作業に時間がかかるなど、今まで当たり前にできていたことがうまくできなくなります。

日常生活の中でも、不安な気持ちが強くなったり、消極的になったり、臨機応変な対応が難しくなったり、決断することができなかったりします。

こうして、生活のしづらさが生じます。

また、無関係な人の声や音に反応し、「あの人は自分のことを話している」、咳払いを聞いて「音で悪口を言われている」などと感じるたり、「自分の気持ちが筒抜けになっている」と感じたり、同じ方向に歩いて行く人をみて「自分をつけている」などと感じたりと、誤った推測をしがちになったります。

周りも気づける統合失調症の発症が疑われる症状

・眠れないようだ
・ちょっとしたことで怒ったり、イライラしている
・いつも何か不安につきまとわれているようだ
・音に過敏になったり、ひとり言を言っていたりする
・誰かに見られている、悪口を言われているなどと訴える
・話の内容にまとまりがない
・身なりや周りのことなどに無頓着になった

大切なのは病気によるものであると言うことにいかに早く気づき、早く治療を始めることです。早期に医療機関を受診することが早期回復につながります。

なぜこうなったのか原因を探し、自分を責めたりする人もいますが、それよりも今からできることを考えましょう。

まずは、いつもと違う行動や態度に気づいたら、その様子を観察し、しばらく続くようであれば医療機関や保健所などに相談してみましょう。

統合失調症の特徴の一つとして、本人の病識が欠けることが多いため、医療機関などへ行くことを強く拒む可能性も十分に考えられます。受診の必要性に関して、一貫した態度をとり、本人の不安をかき立てないよう落ち着いて根気よく、粘り強くそして優しく説得を続けましょう。どうしても本人の受診が難しい場合はご家族だけでも相談してみましょう。

統合失調症の相談窓口

医療機関だけでなく、最寄りの保健所、精神保健福祉センターでも相談を受け付けています。本人だけでなく家族も窓口で相談することができ、電話での相談もできます。窓口に行く時間がなくても電話で相談できるのは助かりますね。

こころの健康相談統一ダイヤル
電話をかけた所在地の精神保健福祉センターをはじめとする公的な相談機関につながります。

みんなねっと相談室
病気のことや経済的な悩み、生活上の問題、障害年金等の福祉制度に関する質問など、家族の立場に理解のある相談員が相談に応じます。

すぐに実践できる統合失調症の方とのかかわり方

・話をしっかりと聴く。ご本人の話がつじつまがあわなくても耳を傾ける姿勢をとる
・妄想的な発言については賛否を保留(そのように思ったんだね、と確認するように返す)
・困っていることが本人にもわからないこともあるので、何が問題なのか一緒に考える

・様々な不安が出てくる(治療、生活、仕事など)ため定期的に確認、調整していく

・急かさず必要に応じて休みを積極的にとる

・強く励ましたり、せき立てないように

・否定的な言葉を言わないようにしましょう

・静かで刺激の少ない環境を確保し、やさしく包み込む空間を意識してつくる。自宅療養が難しいときは一時的な入院も検討

統合失調症との関わり 家族編

統合失調症の発症後の経過にはご家族の対応が大きく影響するといわれています。

家族の接しかたとして重要なポイントは批判的になり過ぎず、過保護にもなり過ぎない適切な距離で本人を安心させ、回復に伴走することです。

症状だけにとらわれず、ご本人の

健康な部分に目を向け、「今できること」「今の目標」をはっきりさせて接することが重要です。

また、統合失調症は再発しやすい病気であり、再発を繰り返すと症状が重くなり回復も難しくなっていく傾向があります。そのため、再発のサインにいち早く気づいてあげることも大切です。

統合失調症の方と関わるうえでの家族の心得

①自分を責めないこと
病気になったのは家族のせいではありません。統合失調症は、脳内の情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれておこる病気です。ご家族や本人が何かをしたから発症したわけではありません。ご家族がご自身を責めたり、本人の将来を悲観する必要はないのです。今からできることを考えてあげましょう。

②回復に向けたイメージをもち希望を持って接すること
家族の接し方が治療の進み方に大きな影響を与えます。病気の症状や正しい治療法を理解し、回復に向けたイメージを持ちましょう。本人にとって、病気のつらい症状をコントロールしたり、折り合いをつけられるようになることが、病気の苦しみを減らす第一歩です。回復に向けたイメージを持つことは、家族だけでなく本人にとっても大切なことです。症状の再燃や再発があったり、ひきこもり症状が遅々として改善しなかったりした場合も、家族が前向きな態度を示すことが大切です。

③保護することと自立心を育てることのバランスを考えること
干渉しすぎたり、過保護にすることは再発の原因にもなるといわれています。甘やかしや過保護にならないよう気をつけながら子ども扱いせず、一人の大人としてご本人のプライドを尊重することが重要です。思春期のような反発がある場合には、少し離れて見守り、よいことはほめ、注意すべきことは工夫して伝えていきましょう

家事手伝いなどの役割をはっきりさせ、できることには手を出さず、本人のやり方やペースを尊重しましょう。

④適切な距離を保ち自身の健康と生活を守ること
極端な自己犠牲は避けましょう。自身の健康と生活も守ることも大切です。家族が健康であることが、良い治療に繋がります。

本人のことを思い、必要以上に尽くしてしまい、疲れやいら立ちが生じてしまいがちですが、その疲れやいら立ちは家族の健康だけでなく、患者本人にも伝わり症状が安定しなくなるという悪循環も生まれてしまいます。

長い療養生活となるので、必要以上に尽くすようなことはせず、普段通りの生活も大切にし、家族の心の余裕を保つことが重要です。

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