メマンチン(メマリー)の特徴、使い方や注意点、作用機序や指導のポイントについて

抗認知症薬

認知症治療薬は大きく分けるとコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の2種類に分けられますが、今回はNMDA受容体拮抗薬であるメマンチン(メマリー)についてお話しします。

特徴

・中等度、高度のアルツハイマー型認知症に使用される
・少量(5mg)から増量し、増量の間隔は1週間、維持量の20mgまで3週目で到達する
・腎機能による薬剤調整の必要がある
・NMDA受容体拮抗薬であり、コリンエステラーゼ阻害薬との併用が可能
・コリンエステラーゼ阻害薬と比べ、消火器症状の副作用が少ない
・認知機能障害の進行を抑制し、言語、注意、実行及び視空間能力等の悪化の進行を抑制するだけでなく、攻撃性、行動障害等の行動・心理症状の進行を抑制する

基本情報

効能・効果 中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制

用法・用量 1日1回5mgにて開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mg
最大容量 20mg/day

腎機能による調整:あり
肝機能による調整:なし
食事の影響:なし
併用禁忌薬:なし
禁忌疾患:なし

味:イチゴ風味の僅かな甘み(メマリーOD)、わずかな甘味(メマリードライシロップ)
ただし、原薬には苦みがあるためか、苦みを感じる人もいるようです。

半減期や最高血中濃度到達時間は

Tmax 6.0hr(20mg単回投与)

半減期 71.3hr(20mg単回投与)

血中濃度が安定するのはいつ頃か

1日1回5mgで開始し、1週間に5mgずつ増量して維持量として1日1回20mgに達したとすれば4週後には血中濃度は定常状態となる。

1日1回5mgからの漸増投与のわけ

副作用の発現を抑えるためです。ですので、基本的に維持量まで増量します。

作用機序

グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA受容体が過剰に活性化すると、神経細胞は余剰なカルシウムイオンが入ってくることによって傷害されてしまいます。さらに、シナプテックノイズと言われる持続的な電気シグナルが増えることにより神経伝達シグナルが隠されてしまいます。

このようにして記憶や学習に関与する中枢のグルタミン酸神経系の機能異常により神経伝達が弱くなり、アルツハイマー型認知症では記憶や学習機能が障害されるわけです。

メマンチン塩酸塩(メマリー)はNMDA受容体と結合して、NMDA受容体の過剰な活性化を抑制し、神経細胞の傷害や電気シグナルの伝達阻害を防ぐことで記憶・学習機能障害抑制作用を示します。

NMDA受容体とは
N-methyl-D-aspartate受容体を略してNMDA受容体といいます。NMDA受容体は神経伝達物質のグルタミン酸により活性化される受容体の1つです。

主な副作用と対応

主な副作用はめまい、便秘、体重減少、頭痛です。

 対応 
メマンチンによって中枢性副作用(めまい、傾眠)がみられた場合は、まず、その副作用の程度と腎機能の再確認を行います。

起立や歩行に問題があったり、起きない、起きてもすぐに眠ってしまう、診察や、食事、入浴中などでも眠ってしまっていたりする場合は投与の中止や半量以下へ減量が必要です。

また、腎機能による調整も大切で、高度腎機能低下(クレアチニンクリアランス値:30mL/min未満)の場合はメマンチンの維持量を10mg/日にします。

副作用の程度が上のように日中の活動に大きな影響を与えない程度である場合は、服薬タイミングを『朝』であれば『夕』や『寝る前』に変更を行い、他に鎮静作用のある薬剤(睡眠導入薬、抗不安薬、抗精神病薬、抑肝散などの漢方製剤など)が併用されていれば減量や中止を検討します。

投与初期にのみ傾眠などがみられる場合もあるので、症状をよく観察しながら判断していく必要があるでしょう。また長期間服用している場合でも副作用が出現する可能性はあるので、それらしい症状が出ている場合は注意が必要です。

メマンチンの相互作用

ドパミン作動薬と併用時

ドパミン作動薬の作用を増強させるおそれがあります。メマンチンのNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体拮抗作用が、ドパミン遊離を促進させる可能性があるためです。

ドパミンの作用増強により、精神症状や幻覚、眠気、浮腫などの出現がないか、レボドパが最も効果が出る時に出現するpeak doseジスキネジアの出現がないかなどの観察は必要でしょう。

ドパミン作動薬には以下のようなものがあります

レボドパ・カルビドパ(カルコーパ)

カベルゴリン(カバサール)、ブロモクリプチン(パーロデル)、ペルゴリド(ペルマックス)

アポモルヒネ(アポカイン)、プラミペキソール(ミラペックス、ビ・シフロール)、ロチゴチン(ニュープロパッチ)、ロピニロール(レキップ)

尿アルカリ化を起こす薬剤との併用

炭酸水素ナトリウムとの併用により尿pHをアルカリ性にした場合、メマンチンのCL/F(全身クリアランス)は単独投与時の約20%~30%と大きく低下(臨床薬理試験)

尿のアルカリ化により、メマンチンの尿中排泄率が低下するため、メマンチンの血中濃度が上昇するおそれがあります。特に併用開始時などはメマンチンの副作用に注意しましょう。

尿アルカリ化を起こす薬剤は以下のようなものがあります

アセタゾラミド(ダイアモックス)
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物(ウタゲン、ウラリット、クエンメット、トロノーム、ポトレンド)
炭酸水素ナトリウム(重曹)

NMDA受容体拮抗作用を有する薬剤との併用

両薬剤ともNMDA受容体拮抗作用を有することから、相互に作用を増強させるおそれがあります。

作用増強によるメマンチンの副作用に注意が必要です。

NMDA受容体拮抗作用を有する薬剤には以下のようなものがあります

アマンタジン塩酸塩(シンメトレル)、デキストロメトルファン(アストマリ、メジコン)

食事の影響

食事の影響はありません。食事の前後で差がないため、いつ服用しても良いでしょう。

肝機能障害による調整

高度の肝機能障害(Child-Pugh C)に関しては安全性が確立していないため、慎重投与となっています。

ただ、メマンチンは腎排泄型の薬剤であり、肝代謝はほとんど受けないことを考えると肝機能の影響は受けにくいことが考えられます。実際に、中等度までの肝障害は影響がないことを示しているデータもあります。

腎機能障害による調整

高度腎機能障害(クレアチニンクリアランス値:30mL/min未満)の場合、維持量は1日1回10mgに調整が必要です。

メマンチンの服用方法

使い方

中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症に対して第一選択薬として使うことができます。

また、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)からの切替え、併用もできます。

服用する時間はいつが良いか

いつでもいいので、飲み忘れをしにくい時間の1日1回しましょう。

朝、昼、夕、寝る前、また、食事も影響ないので食前、食後、食間どのタイミングでも問題ありません。

飲み忘れた場合

次回に2回分飲んだりは決してしないように、気がついた時に、できるだけ早く1回分を飲むようにしましょう。

ただ、次の飲む時間が近い場合は1回とばして、次の時間に1回分を飲みましょう。

その日のうちに気づけば飲み、就寝後はスキップ(1回分とばして次回から)でよいでしょう。

休薬後の再開はどうするか

休薬期間が1週間以内の場合は、維持量で開始し、休薬期間が1週間を超えている場合は少量から漸増しましょう。

使用上の注意点など

メマンチンが始まったときや増量となったとき注意すること

特に投与初期や増量時に、めまい、傾眠が認められることがあるため、注意が必要でしょう。
そのような場合は症状の強さなどに応じて対応します。(主な副作用と対応の項参照)

指導時のポイント
めまいや傾眠が起こりえるということを、できれば事前に患者や周りの人に伝えておきましょう。

2種類の認知症の薬を飲んでるが良いのか?

コリンエステラーゼ阻害剤とメマンチンとの併用であれば、併用は可能。

コリンエステラーゼ阻害剤は、アセチルコリン(ACh)分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を可逆的に阻害して脳内ACh量を増加させることで、脳内のコリン作動性神経系の障害を、賦活化、改善する薬剤です。グルタミン酸神経系の機能障害を改善する薬剤であるメマンチンとは作用機序が全く異なるため相乗効果が期待されます。

メマンチンとドネペジルの併用により、ドネペジルのみの場合よりも認知症の進行を抑制したというデータもあります。

服薬指導時の確認するポイント

・メマンチン開始時や増量時は副作用(めまいや傾眠など)に関して事前に説明

・ドパミン作動薬、尿をアルカリ化する薬剤やNMDA受容体拮抗作用を有する薬剤との併用時は症状変化に注意

・腎機能による用量調整

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