ファビピラビル(アビガン®)の特徴、使い方や注意点、作用機序や指導のポイントについて

ファビピラビル(アビガン®)は抗インフルエンザウイルス剤と呼ばれるグループに属し、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることでインフルエンザの症状を緩和します。

適応は新型または再興型インフルエンザウイルス感染症ですが、他の抗インフル エンザウイルス薬が無効または効果不十分なものに限るとされており、しかも、国が使用すると判断した場合にだけ使うことができます。

ですので、普段のインフルエンザの治療で見ることはありません。

新型コロナウイルスの蔓延により、アビガンという名前をよく目にするようになり、承認の動きがありますがまだ承認はされていません。

【基本情報】

効能・効果
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、 他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分な ものに限る。)
※ 他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は 効果不十分な新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、その対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される

用法・用量
1日目:1回1600mg 1日2回
2 日目から5 日目:1回600mgを1日2回
※総投与期間は5 日間

COVID-19に対して使用する場合は少し違うので注意が必要です。
※承認されているわけではないので適応外使用です。
初日:3600 mg 分2
2日目以降:1600 mg 分2
投与期間:10日間(最長14日間)

Tmax:1.5hr
半減期 :5.6hr
腎機能による調整:なし
肝機能による調整:適宜調整
食事の影響:なし
併用禁忌薬:なし
禁忌疾患等:あり

一包化可能か?

原薬の加速試験、条件40℃、湿度75%で、保管方法はポリエチレン袋で二重にし、ファイバードラム(おそらく紙製の入れ物のようなもの)に入れ6か月間変化なしとのデータから、

一包化は可能と考えます。

詳細は不明ですが光により力価の低下が認められるようなので、念のため光には当たらない状態での保存しましょう。

粉砕可能か?

吸湿性はなく、上の原薬の加速試験のデータから、

粉砕可能と考えます。

詳細は不明ですが光により力価の低下が認められるようなので、念のため光には当たらない状態での保存しましょう。

飲み忘れたとき

5日間だけなのでしっかり飲んで欲しいところですが。そんなことを言っても仕方ないので飲み忘れた場合の対応です。

気がついた時に1回分をできるだけ早く飲んでください。ただし、次の飲む時間 が近い場合は、1回とばして次の時間に1回分飲みましょう。

どれくらいの時間服用間隔を開けるといった具体的なものは何もありませんが、1日2回であること、半減期やTmaxを考えると…。

例えば朝と夕方に飲む場合に、朝飲み忘れたときは、お昼すぎくらいまでに気が付けば朝分を服用し、それ以降の場合は飲まずに次回分から。夕飲み忘れた場合には寝る前までに気が付けば服用し、寝た後に気づいた場合は次回分からといったかたちでよいでしょう。もちろん2回分を一度に飲まないでください。  私見なので参考程度にされてください。詳しくは主治医もしくはかかりつけの薬剤師に相談しましょう。

【作用機序】

細胞内でリボシル三リン酸体(ファビピラビルRTP)に代 謝され、ファビピラビルRTPがインフルエンザウイルスの複製に関与するRNAポリメラーゼを選択的に阻害すると考えられています。

主な副作用

承認時の主な副作用は血中尿酸増加(4.79%)、下痢(4.79%)、好中球数減少(1.80%)、AST(GOT)増加(1.80%)、ALT(GPT) 増加(1.60%)等となっています。

一部がキサンチンオキシダーゼにより代謝されることと薬剤の構造から、薬剤が代謝されることにより尿酸が生成されるのではないかと考えたのですが、腎臓での尿酸の再吸収が増えることによるもののようです。特に尿酸値が高い人や、痛風の既往がある場合は注意が必要です。ただ、5日間の投与なので尿酸値の上昇が大きな問題になる可能性は低いでしょう。COVID-19に使用の場合は投与期間が2週間少し長くなることもあり、フェブキソスタット(フェブリク®)が使用されることもあるようです。ただ、痛風の既往歴がある場合や、高血圧などの併存疾患があるなどでない限り、無症候性の高尿酸血症に対してフェブリクを使用する意義はあまりないようにも思います。

重大な副作用

ショック

冷汗が出る、めまい、顔面蒼白(そうはく)、手足が冷たくなる、意識の消失

 

アナフィラキシー

全身のかゆみ、じんま疹、喉のかゆみ、ふらつき、動悸、息苦しい 肺炎 発熱、咳、痰、息切れ、息苦しい

 

劇症肝炎

急な意識の低下、白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、体がかゆくなる、尿の色が濃くなる、 お腹が張る、急激に体重が増える、血を吐く、便に血が混じる(鮮紅色~暗赤色または黒色)

 

肝機能障害

疲れやすい、体がだるい、力が入らない、吐き気、食欲不振 黄疸 白目が黄色くなる、皮膚が黄色くなる、尿の色が濃くなる、体がかゆくなる

 

中毒性表皮壊死融解症(TEN)

皮膚が広い範囲で赤くなり、破れやすい水ぶくれが多発、発熱、粘膜のただれ

 

皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)

発熱、目の充血やただれ、唇や口内のただれ、円形の斑の辺縁部にむくみによる環状の隆起を 伴ったものが多発する

 

急性腎障害

尿が減る,むくみ,体がだるい

 

白血球減少

突然の高熱、寒気、喉の痛み

 

好中球減少

突然の高熱、寒気、喉の痛み

 

血小板減少

鼻血、歯ぐきの出血、あおあざができる、出血が止まりにくい

 

精神神経症状(意識障害、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)

幻覚、妄想、興奮、抑うつ、意識の低下、意識の消失、軽度の意識混濁、興奮状態、実際には 存在しないものを存在するかのように感じる、根拠が無いのに、あり得ないことを考えてしま う、論理的な説得を受け入れようとしない、顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとす る、手足の筋肉が硬直しガクガクと震える

 

出血性大腸炎

激しい腹痛、血が混ざった下痢、発熱、ふらつき、息切れ

 

腎機能による調整

特記なし

肝機能による調整

軽度及び中等度肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスA 及びB)に、本剤を1日目は1回1200mgを1日2回、2日目から5日目は1 回800mgを1 日2 回経口投与( 1200mg/800mg )したとき、投与5日目のCmax及びAUCは、健康成人に同様の用法及び用量で投与した場 合と比べて、軽度肝機能障害患者ではそれぞれ約1.6倍及 び約1.7倍、中等度肝機能障害患者ではそれぞれ約1.4倍及 び約1.8倍。
重度肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスC)に、 本剤を1 日目は1回800mgを1 日2 回、2 日目から3 日目 は1 回400mgを1 日2 回経口投与(800mg/400mg BID) したとき、投与3 日目のCmax及びAUCは、健康成人に同 様の用法及び用量で投与した場合と比べて、それぞれ約 2.1倍及び約6.3倍であった。

肝機能障害のある患者では適宜用量調整を考慮する必要があると考えられますが、用量調整に関する情報はありません。

食事の影響

影響なし

相互作用

チトクロームP450(CYP)で代謝されず、主にアルデヒドオキシダーゼ(AO)、一部はキサンチンオキシダーゼ(XO)により代謝されます。AO及びCYP2C8を阻害するが、CYPの誘導作用はありません。

併用禁忌:なし

併用注意
テオフィリン(テオドール®):アビガン血中濃度上昇

ピラジナミド(ピラマイド®):尿酸値の上昇

ファムシクロビル(ファムビル®)、スリンダク(クリノリル®):併用薬の効果減弱

レパグリニド(シュアポスト®)
CYP2C8を阻害することにより、レパグリニドの血中濃度を上昇させる。血糖値の変動に注意しましょう。

禁忌疾患等

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
動物実験において、初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこととされています。

また、もちろんファビピラビルに過敏症の既往歴のある患者もだめです。

服薬指導のポイント

・避妊について

催奇形性が動物実験で認められていることから、投与期間中及び投与終了後7日間はパートナーと共に避妊法の実施を徹底する。

女性に限ったことではありません。精液中へも移行し、胎児への影響の可能性もあります。

・授乳中の婦人に投与する場合

主代謝物である水酸化体がヒト母乳中へ移行 することが認められているため、授乳は中止。半減期(5.6hr)からは投与終了後、1日程度で血中からはほぼ消失すると考えられます。投与終了から数日間母乳は破棄して授乳は避け、授乳再開できると考えます。ただ、より安全を考えるなら避妊期間の目安と同じ1週間授乳を避ける

・痛風又は痛風の既往歴のある患者及び高尿酸血症のある患者

血中尿酸値が上昇し、症状が悪化するおそれがあるため注意する

・異常行動について

インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザにかかった時は、異常行動を発現した例が報告おり、異常行動があらわれるおそれがあります。また、転落等の事故に至った例は就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いことや発熱から2 日間以内に発現することが多いことが知られています。自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2 日間、保護者の方は転落 等の事故に対する防止対策を講じてください。

・用法用量、投与期間(5日)、併用注意薬の確認

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