エロビキシバット水和物(グーフィス)の特徴、使い方や注意点、作用機序について

下剤

【基本情報】

効能・効果 慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
用法・用量 1日1回10mg食前
最大用量 1日15mg
Tmax 2hr
半減期 2.5hr

なぜ食前投与なのか?

胆汁酸トランスポーターを直接阻害する薬剤の性質のため、食事の刺激で胆汁酸が放出される以前に服薬することが望ましいと考えられるため。腸管内での胆汁酸の再吸収を効率良く阻害するために食前投与になっている。

胆嚢切除後はどうなる?

胆嚢はあくまで胆汁を貯蔵する臓器であり、切除しても胆汁は肝臓から小腸へ流れ出る。実際に胆嚢切除後にも食事の刺激で胆汁酸は分泌されている報告があるとのこと。胆嚢切除後でも効果は期待できることが予想されている。

【作用機序】

エロビキシバットは回腸末端部の上皮細胞に発現している胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させる。
胆汁酸は、大腸管腔内に水分および電解質を分泌させ、さらに消化管運動を亢進させる為、便秘治療効果が発現する。

胆汁酸について

食物脂肪の吸収に必要な物質。肝臓でコレステロールから合成されて、胆汁として胆嚢・胆管を経て十二指腸に分泌される。分泌された胆汁酸の約95%は小腸で再吸収され、門脈を通って肝臓に戻り、再び胆汁中に分泌される。これが、いわゆる腸肝循環だ。
再吸収されなかった胆汁酸は大腸内において水分を分泌させ、消化管運動を促進。そのため、回腸の疾病では大量の胆汁が大腸に到達して下痢を引き起こすことが知られている。

効果発現時期

投与開始1週目より効果あり。24時間以内に85%、48時間以内に93%が初回の自然排便を認めるとのデータあり。効果発現が早く、排便回数、便の性状も適度に軟らかくなる。

【主な副作用と対策】

腹痛、下痢、下腹部痛、腹部膨満が主な副作用。

腹痛、下痢の頻度が特に高いが、腹痛も下痢も投与一ヶ月目が多く、徐々に減少していくため、症状の強さをみながら調整を行っていく。

用量依存的に排便回数が増加するが、10mg/dayと15mg/dayではほとんど変わらず、Bristol便形状スケールに基づいた便硬度(FAS)では5mg/dayから15mg/dayにかけて用量依存的に硬度が落ちるが、腹痛、下痢の副作用は用量依存的ではない。

【相互作用】

胆汁酸製剤の再吸収が阻害されるおそれあり
ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸など

併用禁忌薬:なし

腎機能・肝機能に伴う用量調整

腎機能:特になし
肝機能:特になし

【食事の影響】

食前投与時のCmax及びAUCは、食事非摂取時の約20~30%

【所感】

大腸に流入した胆汁酸により、水分分泌と大腸運動促進の2つの作用(Dual Action)で排便効果を促す、世界初の胆汁酸トランスポーター阻害剤。商品名はGood (優れた)とFeces (便)の組み合わせに由来するが名前に負けない効果は期待できそう。食前投与となっているところが、他の薬剤との服用タイミングが違うことでの薬剤管理を難しくしそうではある。また、投与初期の腹痛や下痢の副作用への配慮がいると考える。