ブレクスピプラゾール(レキサルティ®)の特徴、使い方や注意点、作用機序や指導のポイントについて

抗精神病薬

本記事では新しい作用機序の抗精神病薬であるブレクスピプラゾール(レキサルティ®)について解説していきます。

特徴

・作用機序はSDAM(セロトニン-ドパミン アクティビティ モジュレーター)という非定型抗精神病役のなかでも新しい作用機序
・用法・用量は1日1回1mgから開始し、4日以上の間隔を明けて1日1回2mgへ増量と、維持量までの期間は短く、用量設定もシンプル
・アリピプラゾール(エビリファイ®)と比べるとアカシジアなどの副作用頻度が少ない
・陽性症状、陰性症状、認知機能障害を改善することが期待される
・抗精神病薬の中でも忍容性が高く、体重増加、高脂血症、糖尿病などの代謝障害、錐体外路症状が軽減されることも期待でき、血圧への影響も少ないとされる
・食事の影響はなく、服用タイミングの自由度が高い
・CYP2D6やCYP3A4阻害剤との併用では血中濃度が上昇する恐れがあり、用量調整が必要である点は注意

基本情報

効能・効果:統合失調症
用法・用量
開始用量:1日1回1mg
維持用量:1日1回2mg(4日以上の間隔をあけて増量)

CYP2D6阻害剤又は強いCYP3A4阻害剤のいずれかを併用、CYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者:1日1回1mg
CYP2D6阻害剤及び強いCYP3A4阻害剤のいずれも併用、CYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者が強いCYP3A4阻害剤を併用:2日に1回1mg

腎機能による調整 あり
肝機能による調整 なし
食事の影響 なし
併用禁忌薬 あり
禁忌疾患 あり

味 フィルムコーティング錠であり、味・においはありません

半減期や最高血中濃度到達時間は

Tmax 5hr(1mg反復投与)

半減期 92hr(1mg反復投与)56hr(1mg単回投与)53hr(2mg単回投与)

血中濃度が安定するのはいつ頃か

1日1回1mgから開始し、4日以上の間隔を明けて1日1回2mgへ増量したとすると、2週間で血中濃度は安定すると考えられる。臨床的なデータも2週間過ぎたあたりから有意差のある効果が見られています。

一包化はできるか

一包化は可能です。データもあります。

レキサルティ錠を分包し、30℃75%RHで6ヵ月保存した結果、性状、含量に変化はありませんでした。その他に水分増加、崩壊時間短縮、硬度低下(低下したが保存期間中は2.0kp(約20N)以上を維持)が認められましたが取扱いに問題はないと考えます。なお他剤との一包化は検討していません。

他剤との一包化に関しても、フィルムコーティングされており影響ないと考えます。

粉砕は可能か

有効成分の過酷試験において、湿度や光に対して安定性を示していることから、粉砕は可能と考えられます。光に対しては微黄色への着色が認められているため変色の可能性はありますがその他に含量などの変化はありません。

作用機序

SDAM(セロトニン- ドパミン アクティビティ モジュレーター)という新しい作用機序を有する薬剤です。

セロトニン5-HT1A受容体及びドパミンD2受容体に強く結合し、部分アゴニスト作用を示すと共に、セロトニン5-HT2A受容体にも強く結合しアンタゴニストとしての作用を示します。
アリピプラゾールと比べ、強力なセロトニン系への作用、ドパミンD2受容体へ部分アゴニストとしての刺激が弱くなっており、ドパミンD2受容体への刺激作用はアリピプラゾールと比べ少なく、ドパミンD2遮断作用が強いと言えます。

明確な機序は不明ですが、これらの薬理作用が臨床における有用性に寄与しているものと考えられています。

薬剤の効果評価時期は?

定常状態となるのが10日程度なため、2週間程度は効果の確認期間として必要と考えます。ただ、副作用評価に関しては数日でできるものもあることから、増量までの期間が4日と定められていると思われます。

どの期間でも同じですが、特に飲みはじめは副作用に注意して、精神症状の変化を数週間かけて慎重に評価しましょう。

主な副作用と対策

アカシジア、頭痛、不眠、高プロラクチン血症が主な副作用です。

不眠が続き、用法が夜に近いときは服用時間を朝にずらすと上手いく場合もあります。

重大な副作用

悪性症候群、遅発性ジスキネジア、麻痺性イレウス、横紋筋融解症、高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、痙攣、無顆粒球症、白血球減少、深部静脈血栓症

併用禁忌

・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者

中枢神経抑制作用が増強されるおそれがあるためです。

・アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除く)

併用注意

・CYP2D6阻害剤(キニジン、パロキセチン等)
・CYP3A4阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)
どちらもレキサルティの作用が増強するおそれがあるので、レキサルティを減量するなど考慮。

キニジン健康成人において、CYP2D6の阻害作用を有するキニジン324mgとブレクスピプラゾール2mgの併用により、ブレクスピプラゾールのCmax及びAUCはそれぞれ11%及び94%増加した10)。

ケトコナゾール健康成人において、CYP3A4の阻害作用を有するケトコナゾール400mgとブレクスピプラゾール2mgの併用により、ブレクスピプラゾールのCmax及びAUCはそれぞれ19%及び97%増加した。

とのことであり、これだけみると血中濃度は強く気にするまではないかもしれませんが、体に入った薬剤がより持続して残ると考えられるため、長期的になると影響を及ぼす可能性があるため注意が必要でしょう。

 

・中枢神経抑制剤
バルビツール酸誘導体、麻酔剤等は相互に中枢神経抑制作用があるので、減量するなど注意する。即座に減量ではなく、不要な薬剤を整理した上で様子を見ましょう。

 

・降圧剤
相互に降圧作用を増強することがあるので、減量するなど慎重投与。ただ、レキサルティの受容体親和性のプロフィールから、α受容体への親和性がその他の受容体への親和性と比較してかなり小さいので、理論的には降圧作用はほぼないと考えてよいと思います。ただ、やはり臨床では何が起こるかわからないので注意です。

 

・ドパミン作動薬、レボドパ製剤
ドパミン作動作用を減弱するおそれがあるので、投与量を調節するなど慎重に投与。やはりパーキンソン病の患者に抗精神病薬を使用するとパーキンソン症状が悪化することはあります。どちらの症状を改善すべきかを常に考えながら調整が必要となります。

 

・アルコール(飲酒)
ともに中枢神経抑制作用を有するため。相互に中枢神経抑制作用を増強させることがある。

・リファンピシン
CYP3Aの誘導作用により、レキサルティの血中濃度と体内に残る時間が大きく減るため、十分な効果を得られない可能性があります。リファンピシンの投与がなければ効果を示したはずの人であっても有効血中濃度に到達できずに効果不十分となる可能性もあると考えられるので、併用は避けたいところです。

食事の影響

ありません。1日のうちの見忘れの少ない飲みやすいタイミングに時間を決めて服用してかまいません。朝食後なら朝食後に毎日、寝る前なら寝る前に決めて使いましょう。

禁忌疾患など

・昏睡状態の患者昏
睡状態を悪化させるおそれがある。

・ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の過敏症既往歴のある患者

腎機能による調整

腎機能障害患者さんは慎重投与です。
腎機能低下に伴い、レキサルティのクリアランスが低下し、血中濃度が上昇するおそれがあります。

高度腎機能障害(クレアチニンクリアランスが30mL/min 未満)のある場合には、減量又は投与間隔の延長等を考慮し、慎重に投与を行います。

腎機能正常被験者(クレアチニンクリアランス80 mL/min超)及び高度腎障害被験者(クレアチニンクリアランス<30 mL/min)に本剤3 mgを空腹時単回経口投与した時のブレクスピプラゾールの薬物動態を比較した結果、遊離型ブレクスピプラゾールのAUC∞は腎機能正常被験者に比べて高度腎障害被験者で1.7倍でした。

遊離型というところからアルブミンの低下などにより蛋白結合したブレクスピプラゾールが減って、遊離型となっているとも考えられますが、透析患者においても蛋白結合率が99.8%であったというデータもあることから、蛋白結合率の低下とは関係なく遊離型が増えていると考えられますね。腎機能による影響もやはり注意が必要でしょう。

平衡透析法における[14C]ブレクスピプラゾールの血清蛋白結合率は99.8%でした(in vitro)

肝機能による調整

肝機能障害被験者22例(Child-Pugh A~C)に本剤2mgを空腹時単回経口投与した時、軽度あるいは中等度肝障害被験者は、肝機能正常被験者と比べてCmaxで差はなく、AUCでそれぞれ1.3倍及び1.7倍であった。高度肝障害被験者は、Cmaxで0.5倍、AUCで差はなかった。肝機能障害被験者(Child-Pugh A~C)においても未変化体の血漿蛋白結合率は99%以上であった。

薬剤が体に蓄積しやすくなる可能性があるので注意しましょう。重度肝障害だけ最高血中濃度が0.5倍になっているのはよくわかりません。

妊婦・授乳婦への影響

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。妊娠後期に抗精神病薬が投与された場合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状があらわれたとの報告がある。

これはもはや決まり文句です。影響がわからなので、これ以上のことは明言できませんと言うことです。

授乳中の婦人に投与する場合

授乳を中止させることとなっています。

ラットで乳汁移行が認められているためです。影響は不明です。

使い方や注意点

切り替え方法

①抗精神病薬が単剤化された後にブレクスピプラゾール1mgを上乗せし、その後4日以上の間隔をあけて、2mgに増量する。

②ブレクスピプラゾール2mgへ増量後10日以上経過して定状状態になってから前の抗精神病薬を徐々に減量する。

③ブレクスピプラゾール単剤化がなされた後に気分安定薬、抗パーキンソン病薬などの併用薬も徐々に減量する。

切り替えの基本的な仕方は上のようになっていますが、実際の処方をみていると前の抗精神病薬が単剤化されないままブレクスピプラゾールが開始となる場合もあります。

ただ、落ちついた後は前の抗精神病薬の減量を試していくのが望ましいと思います。

中止後再開時の投与量

中止前の投与量でよいとされています。中止前の用量が1mgなら1mgから再開。2mgなら2mgから再開です。

アリピプラゾールとの等価換算(目安)

あくまで目安です。
ブレクスピプラゾール1mg=アリピプラゾール12-15mg
ブレクスピプラゾール2mg=アリピプラゾール24mg

服薬指導のポイント

・用法用量の説明

・効能の説明
効果の説明は、患者の困っている症状に合わせて変えることが多いです。考えをまとめられるようになるお薬ですよとか、声が聞こえなくするために飲むお薬ですよとか、いろいろあると思います。
先生からどのように聞いているかは必ず確認することにしています。病識も少ないことが多いので、どういった経緯で病院にかかったのかさぐりさぐり指導を行います。

・衝動性障害の説明
原疾患による可能性もありますが、病的賭博(個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルを繰り返す状態)、病的性欲亢進、強迫性購買や暴食等の衝動制御障害があらわれたとの報告があります。

今まではコントロールできていた衝動的な行動がコントロールできなくなったときは相談するように説明します。

また、薬剤師も話の中からそのような兆候がないかを確認しましょう。

・眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下の説明
自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する。実際は服薬しながら自動車の運転をしていることも多々あります。自動車の運転などは勧められないことを説明します。

いつ飲むのがいいか?薬学的な服用タイミング

時間の指定も特にありませんし、食事の影響を受けないことから薬学的にはいつ飲んでも良いです。食前であろうと食後であろうと効果に差はありません。生活リズムに合わせて、忘れにくい服用タイミングが望ましいでしょう。

※飲むタイミングは先生の指示に従ってください。

飲み忘れた時はどうする?

飲み忘れに気付いたらすぐに1回分を服用しましょう。

次の服用時間が近い場合にはその時に服用せずに、次に服用する時間に1回分を服用し、2回分を一度に飲んではいけません。

具体的には、その日のうちの寝る前までに気づけばその日の分を服用し、寝てしまった場合はとばして次の分から服用でよいと考えます。

病棟でのモニタリングポイント

・用量は適切か
肝機能、腎機能障害による調整が必要ではないかの検討。投与開始時は通常と変わらずでよいと思われます。副作用の症状などを確ながら見ていきます。

・血圧の低下
α1受容体親和性を考えると血圧低下は起こしにくいと考えられますが心・血管疾患、脳血管障害、低血圧又はこれらの既往歴のある患者では特に注意しましょう。

投与初期、再投与時、増量時に起立性低血圧がおこることもあります。

・血糖値、体重増加や脂質異常症などの代謝の変化
血液検査を行うなら項目に入れてもらいましょう。口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状に注意します。

・精神症状のモニタリング
統合失調症の症状変化の確認、衝動性障害や自殺念慮の出現がないかも注意する。

・錐体外路症状がないかの確認