リスペリドン(リスパダール®)の特徴、使い方や注意点、作用機序や指導のポイントについて

抗精神病薬

錠剤、液剤、細粒、注射と剤形が豊富で、臨床では適応のある統合失調症だけでなく、認知症の周辺症状やせん妄に対しても使用されているため、いろいろな場面で処方されているのを見るのではないでしょうか。ここでは、リスパダールの内服薬(錠剤、液剤、細粒)に関してお話していきたいと思います。

【基本情報】

効能・効果 統合失調症、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
用法・用量
統合失調症
開始用量:1回1mg(1mL)1日2回
維持量:2~6mg(2~6mL)分2
最大用量:1日12mg(12mL)

小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
体重15kg以上20kg未満の患者
開始用量:1日1回0.25mg(0.25mL)
4日目~:1日0.5mg(0.5mL)分2
増量の間隔:1週間以上あけて1日量0.25mg(0.25mL)ずつ増量
最大用量:1日1mg(1mL)

体重20kg以上の患者:
開始用量:1日1回0.5mg(0.5mL)
4日目~:1日1mg(1mL)分2
増量の間隔:1週間以上あけて1日量0.5mg(0.5mL)ずつ増量
最大用量:体重20kg以上45kg未満の場合は2.5mg(2.5mL)、45kg以上の場合は3mg(3mL)

リスペリドン
Tmax 1hr(1mgの内用液又は錠剤単回投与)
半減期 3hr(1mgの内用液又は錠剤単回投与)

主代謝物(9-ヒドロキシリスペリドン:パリペリドン)
Tmax:3hr(1mgの内用液又は錠剤単回投与)
半減期:21hr(1mgの内用液又は錠剤単回投与)

腎機能による調整 あり
肝機能による調整 なし
食事の影響 あり
併用禁忌薬 あり
禁忌疾患等 あり

液剤の服用方法

直接服用するか、1回の服用量を水、ジュースや汁物に混ぜて、コップ一杯(約150mL)程度に希釈して服用します。そのままだと甘く後味はあまりよくないという人が多い印象です。

希釈すると嫌な甘味が和らぐことが多いですが、希釈後はなるべく速やかに服用しましょう。

【作用機序】

主としてドパミンD2受容体拮抗作用やセロトニン5-HT2受容体拮抗作用に基づく、中枢神経系の調節によるものと考えられる。

評価の時期

薬理活性のある主代謝物であるパリペリドンの半減期から血中濃度の安定する時期を推測すると、84時間から105時間と考えられます。

4から5日程度で血中濃度は安定するため、1週目から反応が見られると考えます。

【主な副作用と対策】

アカシジア、不眠症、振戦、便秘、易刺激性、傾眠、流涎過多、不安、倦怠感、筋固縮

錐体外路症状が生じる場合も多く、その際は抗コリン薬などの投与を行ったりしますが、症状の強さによって減量や中止も考慮します。

腎機能による調整

腎機能障害患者にリスペリドン1mg錠を単回経口投与したとき、活性成分(リスペリドン+9-ヒドロキシリスペリドン)の薬物動態は、健康成人と比して、中等度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス:30~60mL/min/1.73m2)でt 1/2に35%の延長及びAUCに2.7倍の増大、重度腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス:10~29mL/min/1.73m2)でt1/2に55%の延長及びAUCに2.6倍の増大

半減期が長くなり、AUCが大幅に増大しています。つまり、からだの中に薬剤が残っている時間が長くなっているわけです。調整の必要があります。

クレアチニンクリアランス60未満では最大投与量は6mgと考えていいでしょう。

状況にもよりますが、高齢者のせん妄に使用する場合で腎機能も悪ければ初期投与量0.5mgが安全でしょう。

肝機能による調整

特にないが、慎重投与

食事の影響

内用液剤のみ茶葉抽出飲料(紅茶、烏龍茶、日本茶等)及びコーラは、混合すると含量が低下することがあるので、希釈して使用しないこととなっていますが、これは先発品であるリスパダール内用液のデータに基づくものです。

後発品であるリスペリドン内用液では混ぜても変化のないものも多いです。後発品のメーカーによってデータも違うので1つずつ確認しないと分かりません。原液のままだと独特の甘味などがあり飲みづらいというかたは水で薄めてすぐに飲むのが1番簡単で確実です。

薬剤混合による配合変化

抗てんかん薬のザロンチンシロップ(エトスクシミド)、デパケンシロップ(バルプロ酸ナトリウム)及び抗アレルギー性精神安定薬のアタラックス-Pシロップ(ヒドロキシジン)との配合により、混濁、沈殿や含量低下を認めたことから、混合は避けることとされています。

相互作用

主な代謝酵素は主としてCYP2D6であり、一部CYP3A4の関与も示唆されています。

併用禁忌

バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響
下にある患者では、中枢神経抑制作用が増強されることが
あるため禁忌です。

また、アドレナリンを投与中の患者もアドレナリンをアナフィラキシーの救急治療に使用する場合を除き禁忌となっています。

アドレナリン(ボスミン)です。

どうしてかというと、アドレナリンの作用を逆転させ、血圧降下を起こすことがあるからです。
アドレナリンはアドレナリン作動性α、β受容体の刺激剤で
リスペリドンのα受容体遮断作用によりβ受容体刺激作用が優
位となり、血圧降下作用が増強されます。

併用注意

・中枢神経抑制剤(バルビツール酸誘導体等)
相互に作用を増強することがあるので、減量するなど慎重に
投与。
本剤及びこれらの薬剤の中枢神経抑制作用による。

・ドパミン作動薬

相互に作用を減弱することがある。
本剤はドパミン遮断作用を有していることから、ドパミン作動性神経において作用が拮抗する可能性がある。

・降圧薬

降圧作用が増強することがある。本剤及びこれらの薬剤の降圧作用による。

・アルコール

相互に作用を増強することがある。
アルコールは中枢神経抑制作用を有する。

・CYP2D6を阻害する薬剤(パロキセチン等)
本剤及び活性代謝物の血中濃度が上昇す
ることがある。これらの薬剤の薬物代謝酵素阻害作用による。

<パロキセチン>

統合失調症患者12例にCYP2D6阻害作用を有するパロキセチン(10、20及び40mg/日反復投与)とリスペリドン(4mg/日反復投与)を併用したとき、活性成分の定常状態におけるトラフ値がそれぞれ1.3、1.6及び1.8倍上昇した。

十分な注意が必要でしょう。

・CYP3A4を誘導する薬剤(カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、フェノバルビタール)
本剤及び活性代謝物の血中濃度が低下することがある。
これらの薬剤のCYP3A4誘導作用による。

<カルバマゼピン>

統合失調症患者11例にCYP3A4誘導作用を有するカルバマゼピン(400~1000mg/日反復投与)とリスペリドン(6mg/日反復投与)を21日間併用したときの活性成分(リスペリドン+9-ヒドロキシリスペリドン)のCmax及びAUCτは約50%減少した。

リスペリドンをもともと内服している場合に、気分安定薬としてカルバマゼピン(テグレトール)を開始したらリスペリドンの効果が減弱する可能性がこのデータからうかがえます。併用の際は十分な注意が必要と考えます。

・CYP3A4を阻害する薬剤(イトラコナゾール等)

CYP3A4阻害作用によりリスペリドン及び活性代謝物の血中濃度が上昇することがある。

<イトラコナゾール>

統合失調症患者19例にCYP3A4阻害作用を有するイトラコナゾール(200mg/日反復投与)とリスペリドン(2~8mg/日反復与)を併用したときの活性成分の定常状態におけるトラフ値は65%上昇した。

<フルボキサミン>

統合失調症患者11例にCYP3A4及びCYP2D6阻害作用を有
するフルボキサミン(100mg/日反復投与)とリスペリドン(3
~6mg/日反復投与)を併用したとき、活性成分の血漿中濃度
に併用薬は影響を及ぼさなかった。また、フルボキサミンを
200mg/日に増量した患者では、リスペリドンの定常状態にお
けるトラフ値が86%上昇したが、9-ヒドロキシリスペリドン
の血漿中濃度に影響を及ぼさなかった。

トラフ値が上がっているということは、AUCももちろん増大していると考えられます。併用には十分注意しましょう。できることなら併用はしたくありません。

禁忌疾患等

・昏睡状態の患者

昏睡状態を悪化させるおそれがある。

・本剤の成分及びパリペリドンに対し過敏症の既往歴のある患者

妊婦・授乳婦への影響

・妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上
の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投
与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立
ていない。妊娠後期に抗精神病薬が投与されている場
合、新生児に哺乳障害、傾眠、呼吸障害、振戦、筋緊
張低下、易刺激性等の離脱症状や錐体外路症状があら
われたとの報告がある。]
・授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させる
こと。[ヒトで乳汁移行が認められている。]

どちらも決まり文句です。

使用上の注意点

・高齢者への投与
高齢者では錐体外路症状等の副作用があらわれやすく、ま
た、腎機能障害を有する患者では最高血漿中濃度が上昇
し、半減期が延長することがあるので、少量(1回0.5mg
(0.5mL))から投与するなど、患者の状態を観察しながら
慎重に投与する。

・投与初期、再投与時、増量時にα交感神経遮断作用に基づく起立性低血圧があらわれることがあるので、少量から徐々に増量し、低血圧があらわれた場合は減量等、適切な処置を行う

・眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意

・統合失調症で興奮、誇大性、敵意等の陽性症状を悪化させる可能性があるので、悪化がみられた場合には他の治療法に切り替えるなど適切な処置を行う

・高血糖や糖尿病の悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、本剤投与中は、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意するとともに、特に糖尿病又は
その既往歴あるいはその危険因子を有する患者につい
ては、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。

・低血糖があらわれることがあるので、本剤投与中は、脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状に注意するとともに、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。

・抗精神病薬において、肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、不動状態、長期臥床、肥満、脱水状態等の危険因子を有する患者に投与する場合には注意

・小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対して本剤を投与する場合は、定期的に安全性及び有効性を評価し、漫然と長期にわたり投与しないこと。

服薬指導の確認ポイント

・用法用量の説明

・禁忌、重複投与の確認

リスペリドンの活性代謝物はパリペリドン(インヴェガ)であり、パリペリドンを含有する経口製剤との併用は避ける。

・相互作用の確認

・高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿等)、低血糖症状(脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等)に注意し、このような症状があらわれた場合には、相談するように説明

・錐体外路症状の確認

病棟でのモニタリングポイント

・悪性症候群(Syndrome malin):無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等が発現し、それに引き続き発熱がみられる場合、投与を中止。

・遅発性ジスキネジア:長期投与により、口周部等の不随意運動があらわれる。

・麻痺性イレウス:腸管麻痺(食欲不振、悪心・嘔吐、著しい便秘、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状)を来し、麻痺性イレウスに移行することがある

・抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH):低ナトリウム血症、低浸透圧血症、尿中ナトリウム排泄量の増加、高張尿、痙攣、意識障害等を伴う抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)があらわれることがある。

・肝機能障害、黄疸:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、検査値の確認

・横紋筋融解症:筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがある

・不整脈:心房細動、心室性期外収縮等があらわれることがある

・脳血管障害:脳血管障害があらわれることがある

・高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡:高血糖や糖尿病の悪化があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡に至ることがあるので、本剤投与中は、口渇、多飲、多尿、頻尿等の症状の発現に注意し、血糖値の確認測定を行う

・低血糖:低血糖があらわれることがあるので、脱力感、倦怠感、冷汗、振戦、傾眠、意識障害等の低血糖症状に注意

・無顆粒球症、白血球減少(0.56%):無顆粒球症、白血球減少があらわれることがある

・肺塞栓症、深部静脈血栓症:抗精神病薬において、肺塞栓症、静脈血栓症等の血栓塞栓症が報告されているので、観察を十分に行い、息切れ、胸痛、四肢の疼痛、浮腫等が認められないか確認

・持続勃起症:α交感神経遮断作用に基づく持続勃起症があらわれることがある

・認知症に関連した精神病症状に対して使用している場合は、症状がおさまり落ち着いてから2週間から1ヶ月程度様子をみてかわりなければ中止を試みる。

認知症を有する高齢患者を対象とした17の臨床試験において、本剤を含む非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して死亡率が1.6~1.7倍高かったとの報告がある。また、外国での疫学調査において、定型抗精神病薬も非定型抗精神病薬と同様に死亡率の上昇に関与するとの報告があること、症状がおさまった後に中止しても悪化しないなどの報告もあります。

・α1アドレナリン拮抗作用のある薬剤を投与された患者において、白内障手術中に術中虹彩緊張低下症候群が報告されている。術中・術後に、眼合併症を生じる可能性があるので、術前に情報共有

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