バセドウ病の基本情報まとめ 薬物療法と服薬指導のポイントも解説

内分泌科

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られ、甲状腺機能亢進症を起こす代表的な自己免疫疾患です。

通常であれば、血中の甲状腺ホルモン濃度は、下垂体から分泌される甲状腺ホルモン(TSH)とのフィードバック機構により、一定に保たれています。

バセドウ病では自身の甲状腺を刺激する抗体(自己抗体)が造りだされてしまい、その自己抗体がTSHと同様に甲状腺刺激ホルモン受容体を刺激して甲状腺ホルモンを必要以上に生産分泌させます。どのような機序で自己抗体が作られるかはいまだに分かっていません。

症状

全身症状:体重減少、疲労感、暑がり、微熱
局部症状:甲状腺腫
眼症状:眼球突出、まぶたの腫脹
循環器症状:高血圧、動悸、頻脈、息切れ(労作時)
皮膚症状:多汗、湿潤、痒み、色素増加、前脛骨粘液水腫
神経精神症状:いらいら、手指振戦、集中力低下
消化器症状:食欲亢進、下痢、軟便、排便回数増加
筋肉骨格症状:筋力低下、骨粗鬆症、周期性四肢麻痺、脱力感
性腺系症状:過小月経、生理不順、性欲減退

診断

下に示している臨床所見と検査所見の満たす項目の数によって診断されます。

臨床所見
1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
2.びまん性甲状腺腫大
3.眼球突出または特有の眼症状

検査所見
1.遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値
2.TSH低値(0.1μU/ml以下)
3.抗TSH受容体抗体(TRAb, TBII)陽性、または刺激抗体(TSAb)陽性
4.放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性

バセドウ病は臨床所見の1つ以上に加え、検査所見4つを有すたるもの

確からしいバセドウ病は臨床所見の1つ以上に加え、検査所見の1、2、3を有するもの

臨床所見の1つ以上に加えての検査所見1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3ヶ月以上続くものはバセドウ病疑いとなります。

バセドウ病関連で検査される検査値の正常値TSH値 0.61-4.23μU/mL
甲状腺ホルモン濃度
・遊離サイロキシン(FT4) 0.82~1.63ng/dL
・遊離トリヨードサイロニン(FT3) 2.1~3.8pg/dL

治療

抗甲状腺薬療法、アイソトープ療法、外科的療法の3つがあります。
抗甲状腺薬治療が第一に選択されることが多く、最も広く行われています。

抗甲状腺薬に加え、バセドウ病の症状に対して対症療法として併用されるお薬もあります。

抗甲状腺薬による薬物療法

チアマゾール(メルカゾール:MMI)やプロピルチオウラシル(チウラジール:PTU)

MMI:初期1日30mgを3~4回に分けて服用、維持量5~10mgを1~2回に分けて服用

PTU:初期1日300mgを3~4回に分けて服用、維持量50~100mgを1~2回に分けて服用します。

メルカゾールとチウラジールの特徴比較

半減期が長く投与回数が少なくてよく、効果発現早く、肝障害などの副作用が少ないのがメルカゾール、半減期が短く投与回数も多く、効果発現は遅く、肝障害などの副作用が比較的おおいのがチウラジールです。

これだけで終わるとチウラジールっていいところないじゃないかと思うかもしれませんが、母乳への移行がしにくいというのが母乳への移行をしやすいメルカゾールと異なるメリットです。

 メルカゾールチウラジール
投与間隔1日1-2回1日3-4回
半減期20時間1.5時間
効果発現早い遅い
肝障害なし※あり※
SLE症候群少ない多い
母乳移行しやすいしにくい

※「メルカゾールの肝障害なし」、「チウラジールの肝障害あり」というのはメルカゾールとチウラジールを比較したときに肝障害がチウラジールの方が多いという意味合いです。

メルカゾールやチウラジールの副作用

無顆粒球血症、白血球減少、再生不良性貧血、発熱、皮膚症状(痒み、発疹)、肝障害、脱毛、むくみ、関節・筋肉痛、胃腸障害、精神神経障害など

治療の経過やバセドウ病の症状に対して併用される薬剤

β遮断薬
バセドウ病では甲状腺ホルモン過剰により、交感神経β受容体の増加と感受性が亢進されます。
それにより、交感神経が常に刺激されているような状態となってしまい動悸、頻脈、発汗、手指の振戦が現れます。
このような症状に対してβ遮断薬が併用されることが多く、FT4、FT3が正常化し、自覚症状が改善されれば投与中止となります。

甲状腺ホルモン薬
甲状腺機能が正常化してもTSAb価が低下しない場合や、MMIの投与量の調節が困難な場合は甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)を併用します。

精神安定薬
精神症状(神経質、不安神経症、情緒不安定)の改善

整腸薬、止瀉薬
消化器症状(下痢、軟便)の改善

ビタミンB群製剤
対処亢進による体力消耗の補充

抗アレルギー薬
抗甲状腺薬による薬疹、痒みの改善

病棟業務や服薬指導のポイント

抗甲状腺薬処方時の主な確認事項

  1. アレルギー歴、副作用歴、妊娠や授乳の有無
  2. 検査データの確認(TSH、FT4、FT3)
  3. 自覚症状の有無と内容
  4. 併用注意や併用禁忌薬剤の確認
  5. 生活歴(喫煙歴、嗜好品などの確認)
  6. 健康食品、海藻類(昆布など)の摂取やヨード含有消毒薬などの過度の使用歴

患者指導のポイント

  1. 服薬の用法・用量説明 (初期量から維持量になるにつれ徐々に漸減していくため、飲み間違えのないように)
  2. 副作用説明
    無顆粒球血症:MMIは投与2週~3ヶ月が多い 開始2ヶ月は2週に1回検査
    喉の痛み、発熱、全身倦怠感などあれば直ちに受診するように指導
    痒み・蕁麻疹、消化器症状や色素沈着など
    実際のところは色素沈着に関しては聞かれたときにしか説明はしていません。痒みや蕁麻疹の出現があった場合は抗アレルギー剤を併用することもあります。
  3. 服用期間:効果発現まで2~4週かかり、少なくとも1年以上の服用が必要
  4. 昆布の過剰摂取(その他の海藻類はよい)、ヨード含有消毒薬の過度の使用は避ける