小児科で少し前にもらったけど、この薬どんな薬だったっけと思う事ってありますよね。そこで、小児科でよく出される坐薬をまとめました。
基本的にお薬の名前は「一般名(商品名)」で記載しています。難しく考えず、どちらもお薬の名前と思っていただければいいです。最近は後発医薬品(ジェネリック医薬品)が普及してきているので、いろいろな名前が混在していてわかりにくいですよね。
例えばすぐ下のアセトアミノフェン(アンヒバ)なら、アセトアミノフェン坐薬というお薬と、アンヒバ坐薬というお薬があって、お薬の成分(効果)は同じものだということです。
アセトアミノフェン(アンヒバ)坐薬
小児や妊婦にも安全に使用可能な鎮痛解熱薬とされていて、発熱で救急外来受診するとよく出される。効果は30分以内にではじめ、1時間から2時間後にはピークとなり4時間後くらいまで効果が持続するとされている。
NSAIDsといわれる痛み止めと比較するとの重大な副作用である消化管障害・腎障害・心血管系傷害などは少ないが、大量に使用すると肝障害を起こすこともある薬剤なので、肝機能障害には注意が必要です。また、ドラッグストアなどで売られている一般用医薬品にも含まれていたりするので、併用する際は注意が必要です。
基本情報
効果:解熱・鎮痛
投与量:10~15mg/kg/回
最大投与量:60mg/kg/日
効果発現時間:30分程度
効果持続時間:4時間程度
使用間隔:4~6時間以上あける
貯法:冷暗所
坐薬が出てきてしまった場合の対処方法
便とともに出てきてしまった場合は10分以内なら再投与。それ以降なら様子を見る。
坐薬がどろどろになって出てきてしまった時は坐薬を入れてから30分程度は様子を見る必要がある。
それでも効果が全くない場合はもう1回坐薬を入れても良いと考えられます。
また、形を保ったまま直ぐに出てきた場合などは出てきた坐薬をそのまま入れなおしてあげましょう。
どれくらいまで投与できるのか?
小児科領域において1回の投与量は10~15mg/mg/回、最大投与量は60mg/kg/日となっていて、1回の最大投与量は500mgまで、1日の最大投与量は1500mgまでです。
アセトアミノフェンの作用機序
アセトアミノフェンはシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害活性が弱く、抗炎症作用はほとんどない。
視床下部の体温中枢に直接作用して熱放散を増大させることにより解熱作用を発揮するといわれています。平熱時にはほとんど体温に影響を及ぼさず、鎮痛作用はあまり強くなく緩和な痛みに限られています。
他の坐薬との併用方法
油脂性基剤と脂溶性薬剤の坐薬を使う順番・間隔
アンヒバやアルピニーなどの油脂性基剤の坐薬と、ダイアップやナウゼリンなどの脂溶性薬剤の坐薬を併用する場合、先に脂溶性薬剤(ダイアップやナウゼリン)を使用し、30分以上あけてアンヒバやアルピニーを使用する。
では、なぜダイアップやナウゼリンなどの脂溶性薬剤を先に使用する必要があるのでしょうか??
アンヒバやアルピニーなどの油脂性基剤の坐薬を挿入すると、薬剤の成分であるアセトアミノフェンは吸収されるが、その薬剤を保持していた油脂性基剤が直腸内に残った状態となります。
その後、ダイアップやナウゼリンなどの脂溶性薬剤を使用すると、その残っている油脂性基剤の中に脂溶性であるダイアップやナウゼリンの薬剤の成分が取りこまれてしまい、取り込まれた薬剤は吸収されにくく、ダイアップやナウゼリンの効果が減弱してしまうわけです。 なので、油脂性基材を使用したあとに脂溶性薬剤を使う場合は出来る限り時間をあけた方が良い。
ジクロフェナク(ボルタレン)坐薬
NSAIDsに分類される薬剤
効果:解熱・鎮痛
投与量:0.5~1mg/kg/回(坐薬)
効果発現時間:30分程度
効果持続時間:6時間(解熱効果)
貯法:冷暗所
一度溶けてしまったけど使えるか?
1本使用する場合は使える。切断する場合は薬剤の有効成分に偏りが生じる場合があるのでだめ。変形している場合は使用しないこと。
坐薬のメリット
短期間の使用であれば胃腸障害の副作用発現が経口と比較して低い。(ボルタレン錠6.6%に対し、ボルタレンサポ0.8%)
ボルタレンによる胃粘膜障害の発現機序は、消化管への直接刺激作用とプロスタグランジン(PG)合成阻害により粘膜の内因性PG減少し粘膜防御機能が低下することによるものと考えられています。
坐剤においても直腸から吸収された薬剤が大循環を介して胃粘膜に到達し胃腸障害を呈する場合があります。長期使用の場合は投与経路による影響はないとされている。
インフルエンザ脳炎・脳症に禁忌となっており、小児ではウイルス感染いよる解熱に原則使用しない。
また、過度の体温下降・血圧低下によるショックに注意することと、気管支喘息のある患者への使用は注意。
ドンペリドン(ナウゼリン)坐薬
効能・効果(小児):周期性嘔吐症、乳幼児下痢症、上気道感染症、抗悪性腫瘍剤投与時および薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、腹痛)
用法・用量
3才未満:1回10mg 1日2~3回直腸内投与
3才以上:1回30mg 1日2~3回直腸内投与
効果時間:1時間前後、2時間後くらいにピークに達して10時間前後まで効果持続する
貯法:室温保存
坐薬を入れた後に出てきたときは?
30分以内に排出したら、吸収されてない可能性が高いので、再投与
投与する時の注意
錐体外路症状、意識障害、痙攣が発現することがあるので、特に1才以下の乳児には用量に注意しましょう。3才以下の乳幼児には7日以上の連用を避けることとされています。
ジアゼパム(ダイアップ)坐薬
効能・効果:熱性けいれん及びてんかんのけいれん発作の改善
用法・用量:1回0.4~0.5mg/kg 1日1~2回
最大投与量:1日1mg/kg/日
効果時間:15~30分程度で効果発現し、8時間以上効果が持続する
(さらに、8時間後に再投与することで初回投与後24時間以上有効血中濃度を維持する)
貯法:室温保存
作用機序
脳の神経細胞の興奮を抑えてけいれんをおこしにくくします。そのため、熱を下げる効果はありません。
熱性けいれんの既往がある小児において発熱時のジアゼパム投与
熱性けいれんのい再発予防効果は高いとされているものの、副作用も存在し、ルーチンに使用する必要はないとされています。
発熱時のジアゼパム投与の適応基準
小児のガイドラインにおいて、以下の適応基準1)または2)を満たす場合に使用するとされています。
1) 遷延性発作(持続時間15 分以上)
2) 次のⅰ~ⅵのうち二つ以上を満たした熱性けいれんが二回以上反復した場合
ⅰ. 焦点性発作(部分発作)または24 時間以内に反復する
ⅱ. 熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常、発達遅滞
ⅲ. 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
ⅳ. 12 か月未満
ⅴ. 発熱後1時間未満での発作
ⅵ. 38℃未満での発作
解熱薬と併用時の注意
解熱薬(坐薬)とジアゼパム坐薬を併用する場合にはジアゼパム坐薬挿入から30分以上あけて解熱薬(坐薬)を挿入する。同時に挿入すると両薬の基剤の違いが影響し、ジアゼパムの直腸粘膜での吸収が低下する。経口解熱薬は関係ないので問題ありません。
副作用は?
ふらつきや眠気が主な副作用です。抗けいれん作用だけでなく、鎮静作用もあるので、個人差はありますがふらつきや眠気がでたり、ぼーっとしたりすることがあります。
熱性けいれんとは
「38℃以上の発熱に伴って乳幼児期(主に6ヶ月から5歳位まで)におこるけいれんや一時的な意識障害」を「熱性けいれん」とよびます。
基本的には良性の痙攣で、後遺症が残ったりとか、発達、成長に影響を与えるようなものではありません。
3割が再発するといわれていて、我が子がけいれんしている姿を見るとぞっとしますが冷静に対応することを心がけましょう。
けいれん時の対応
まずは安全な平らな場所に寝かせてあげましょう。次に、口のなかにものがある場合は横を向けるなど、呼吸の妨げにならないようにしましょう。手を口のなかに突っ込むなどはしないほうがよいです。
次に大切なのはけいれんの特徴を観察し、けいれん時間を大体でいいので測ります。動画などでとる余裕があれば、時間も特徴もわかるので簡単です。
けいれんの特徴は、けいれんが全身にあるのか、筋肉の硬直があったかなどを押さえておくと良いでしょう。
治療
・発作が続いていたらジアゼパム(ダイアップ)坐薬の投与
・発熱の治療
・再発例、重症例(複合型)では、再発予防を行う
発熱時(37.5℃以上)でジアゼパム坐薬 0.5mg/kg挿肛、8時間後に38.0℃以上の発熱が続いていれば再度挿肛します。
重症例の複合型とは
痙攣の持続が15分以上、けいれんが半身性もしくは焦点性、痙攣後の麻痺や意識障害、1日に2回以上繰り返す、6ヶ月以下もしくは6歳以上で脳障害の既往、神経学的異常、てんかんの家族歴がある場合のことをいいます。
フェノバルビタール(ワコビタール、ルピアール)坐薬
効能・効果
催眠、不安・緊張状態の鎮静、熱性けいれんおよびてんかんのけいれん発作の改善
用法・用量:1日4~7mg/kg
効果時間:60分以内に効果発現し、半減期は極めて長く持続時間が長い
貯法:冷暗所
※最近はあまり使われていません
抱水クラロール(エスクレ)坐剤
効能・効果:理学検査時における鎮静・催眠、静脈注射が困難なけいれん重積状態
用法・用量:30~50mg/kg/回(総量1.5gを超えない)
効果時間:10~40分で効果発現し、30~70分持続する
禁忌:ゼラチンアレルギー
貯法:冷暗所
使用時の注意点
・坐薬の太い方から挿入する。意外なことに細い方からではない。薬剤の表面や肛門部にゼリー様の油性物質を塗ると挿入が楽になる。
・水でぬらして挿入しやすくする方法もあるが、水でぬらすと変形、膨潤して挿入が難しくなることがある。
ビサコジル(テレミンソフト)坐薬
効能・効果:便秘症・消化管検査時又は手術前後における腸管内容物の排除
作用機序:蠕動運動の促進及び排便反射の刺激作用がある。直腸粘膜を直接刺激し、腸の運動を活発にして排便をうながします。
効果時間:5分~1時間作用発現
用法・用量
乳幼児:1回2mg
小児:1回5mg
禁忌:急性腹症が疑われる患者、痙攣性便秘、重症の硬結便、肛門裂創や潰瘍性痔核のある患者
以上、坐薬のまとめでした。最後までお読みいただきありがとうございます。