プロラクチンとは
まずは、プロラクチンについて。
下垂体前葉のプロラクチン産生細胞から分泌されるホルモンで、乳腺に作用し、乳汁の産生・分泌を調整する。
プロラクチンの産生と分泌はペプチド、ステロイドおよび神経伝達物質により制御されていて、その中の1つに、ドパミンがある。
ドパミンはプロラクチン産生を抑制する物質で、プロラクチン産生細胞膜上のドパミンD2受容体に結合してプロラクチン産生を抑制しているんだ。
プロラクチン血中濃度は夜間高値・日中低値となる日内変動があって、明け方の起床前にピークになる。ただ、日内の周期的なものではなくて、眠ることによる分泌増加だから、昼寝でも増加が認められる。ストレス、運動、食事でも一時的に上昇するよ。
高プロラクチン血症とは
プロラクチンの血中濃度が異常に高いことを示す疾患。妊娠や産褥期には血中プロラクチン値は高くなるが、これら以外に高値をとる場合は異常とみなすんだ。
症状
高プロラクチン血症の典型的な臨床症状としては性腺機能低下症、乳汁漏出無月経症候群だ。女性では月経異常が起こり不妊の原因、男性では性欲減退や稀に女性化乳房になることもあるんだ。
要因
プロラクチノーマ(プロラクチン産生腫瘍)、薬剤(向精神薬、降圧剤、胃腸薬、ホルモン剤など)、原発性甲状腺機能低下症、腎不全、肝硬変など
基準値
成人男性:3~17.3 ng/ml
成人女性:1.6~21.9 ng/ml
薬剤性高プロラクチン血症
高プロラクチン血症といえば、抗精神病薬の副作用の1つとして有名な副作用だけど、これは抗精神病薬がドパミンD2受容体をブロックし、ドパミンによるプロラクチン産生抑制を妨げることによって引き起こされているんだ。すべての抗精神病薬がD2受容体をブロックするから、すべての抗精神病薬で高プロラクチン血症を引き起こす可能性があるね。
けど、D2受容体からの解離速度が速い抗精神病薬は、血漿中プロラクチンレベルの増加が少ないと言われていて、理由はそれだけじゃないけど、プロラクチンを増加させる抗精神病薬(リスペリドンなど)とプロラクチン増加を起こしにくい抗精神病薬(クロザピン、アリピプラゾールなど)があるよ。
セロトニン、ヒスタミン、オキシトシン、オピオイドなどはプロラクチン分泌促進作用があるため、抗うつ薬、消化器官用剤(H2ブロッカー、制吐剤)も原因薬となる。また、下垂体に直接作用するホルモン薬も原因となるよ。
治療
高プロラクチン血症の症状が出ているか、患者の状態は落ち着いているかなどをみて、可能であれば原因薬剤の減量、中止、高プロラクチン血症を引き起こしにくい薬剤への変更を行う。原因薬の継続の必要性がある場合は、ブロモクリプチン、テルグリド、カベルゴリンなどのドパミン作動薬を併用する。