壊死性軟部組織感染症

壊死性軟部組織感染症(Necrotizing soft-tissue infection:NSTI)とは

壊死性軟部組織感染症というと長いので、ここからはNSTIと略します。

NSTIとは、皮膚から筋肉までの軟部組織の壊死性感染症を示し、筋膜の感染を主座とすることが多く、その場合は壊死性筋膜炎といいます。壊死性筋膜炎とは、浅層筋膜を細菌感染を主座として急速に壊死が拡大する致死性の軟部組織感染症です。皮膚の灰白色に変色した紫斑、水疱や血疱などがあれば、進行した壊死性筋膜炎が疑われます。死亡率も20-30%と高く、初期に見つけることが予後を考えると非常に大切です。

NSTIの分類

Ⅰ型とⅡ型に分類される。

Ⅰ型の特徴

・嫌気性菌を代表とした混合感染
・易感染性や免疫低下状態がリスクとなる
・好発部位は腹壁、会陰部、鼠径部など

【起炎菌】
嫌気性菌:Bacteroidesspecies、Clostridiumspecies、peptostreptococcusspecies
腸内細菌:E.coli、Enterobacterspecies、Klebsiellaspecies、Proteus species
その他:P.aerginosa

Ⅱ型の特徴

・A群溶血性連鎖球菌が主
・健常者にも起こるり、好発部位は下肢

【起炎菌】
・Group Astreptococci、Staphylococcus aureus
起炎菌は多種多様である。

NSTIの症状

症状の特徴としては、急速な疼痛範囲の拡大(マジックで痛みの範囲をマーキングし、30分後、1時間後、2時間後に観察を行ったりするほど、時間単位で広がっていく)、見た目よりも強い痛み、バイタルサインの乱れなどがあります。ただし、筋膜が壊死した部分や末梢神経障害などでは痛みを感じないこともあります。症状を早期、中期、後期と分けると、下のようになります。

Stage1 早期症状
圧痛、紅斑、腫脹、熱感

Stage2 中期症状
水疱、皮膚の波動・硬結

Stage3 後期症状
握雪感、血清水疱、皮膚壊死、皮膚の知覚鈍麻

病状が進むと比較的分かりやすい疾患と考えられますが、初期には表層の組織(皮膚や皮下組織)には所見が出ず、見た目だけでは分からないため、疑わしい場合は外科的な試験切開が有用です。早期に治療を開始しなければきわめて予後は悪いため、初期に見つけることが大変重要な疾患であり、見逃さないことが大切と考えられます。

早期発見のためにできること

LRINECスコア(Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis score)という指標があります。これは、壊死性筋膜炎の早期診断を可能にするためのスコアです。

合計が6点以上であれば壊死性筋膜炎の疑いが強まり,8点以上なら75%以上の確率となるとされています。CRP、白血球数、ヘモグロビン、血清Na、血清クレアチニン、血清ブドウ糖値の値によりスコアを付けていきます(スコアの一覧は下)

あくまでスコアリングなので、スコアが低くても可能性は残る。壊死性筋膜炎かもしれないと考えることが一番重要。

LRINEC スコア

・血清CRP≧150 mg/L(4点)
・白血球数15000-25000/μL(1点)もしくは>25000/μL(2点)
・ヘモグロビン11.0 -13.5 g/dL(1点)もしくは≦11g/dL(2点)
・血清ナトリウム<135 mEq/L(2点)
・血清クレアチニン>1.6 mg/dL(2点)
・血清ブドウ糖値>180mg/dL(1点)

治療

早期の外科的デブリドマンを行うと同時に抗生剤の投与を行う。

抗菌薬の初期治療はスペクトラムを外さないように、カルバペネムもしくはピペラシリン・タゾバクタム+クリンダマイシン±バンコマイシン等、スペクトラムは広く選択していく。

とにかく外さないことが大切。

培養結果を参考に、のちのち、可能であればde-escalationしていけばよい。

ここですこし、クリンダマイシンに関して
A群溶連菌は毒素を産生することで組織の壊死を進行させるが、クリンダマイシンはタンパク合成を阻害する作用があり、この毒素の産生を阻害する。

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