スボレキサントの特徴、使い方や注意点、作用機序や指導のポイントについて

睡眠薬

本記事では、新しい作用機序で自然な眠りを促すといわれる、不眠症に効果のあるスボレキサント(ベルソムラ®)の基本的な情報から特徴をまず確認し、次に使い方や注意点にふれ、最後に作用機序や指導する際のポイントについて説明していきます。

特徴

  • 半減期は12.5時間と比較的長い
  • 入眠効果、睡眠維持効果の両方を併せ持ち、入眠障害にも中途覚醒にも使用されている
  • 人によっては味を感じる人もいるようだが無味
  • ベンゾジアゼンピン系薬剤のような耐性形成や依存性はない

基本情報

効能・効果:不眠症(二次性不眠症に対する有効性及び安全性は確立されていない)
用法・用量:成人1日1回20mg、高齢者1日1回15mg

腎機能による調整:なし
肝機能による調整:なし
食事の影響:あり
併用禁忌薬:あり
禁忌疾患等:なし
味:なし

半減期や最高血中濃度到達時間は

Tmax:1.0hr(20mg単回投与)
半減期:12.5hr(20mg単回投与)

作用機序

睡眠と覚醒は脳内の睡眠システムと覚醒システムが切り替わることにより調整されており、不眠症患者では就寝時に覚醒システムが亢進しているといわれています。

覚醒システムに関連する神経ペプチドであるオレキシンは、オレキシン受容体に結合することで覚醒維持の役割を担っているとされています。

オレキシンは視床下部外側野にあるニューロンで産生され、オレキシンAとオレキシンBが存在していて、オレキシン受容体には1と2のサブタイプがあることが分かっています。

オレキシン受容体拮抗薬はこの覚醒システムに関連するオレキシンの結合を阻害することで、覚醒システムを抑制し、覚醒状態から睡眠状態へと切り替え、眠りをもたらしてくれます。

スボレキサント(ベルソムラ)はオレキシン受容体に選択性が高く可逆的な拮抗薬で、ヒトオレキシン1(OX1)受容体及びオレキシン2(OX2)受容体に対する親和性をもち、オレキシンのオレキシン受容体への結合を阻害することで睡眠を促します。

γ-アミノ酪酸(GABA)、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、メラトニン、ヒスタミン、アセチルコリン及びオピオイド受容体に対して親和性は示さないことから、

覚醒を促す神経ペプチドであるオレキシンの受容体への結合を阻害することで脳を覚醒状態から睡眠状態へ移し、睡眠を促すとされています。

主な副作用と対策

傾眠、頭痛、疲労、浮動性めまい、悪夢(投与開始初期に多い)など

副作用の症状の強さによって減量もしくは中止を検討する必要があるでしょう。短時間のベンゾジアゼピン受容体作動薬などと比較すると半減期は12.5時間と長く、眠気が翌朝強くでることもあるので、特に高齢者などでは注意が必要です。

高齢者では15mgを投与となっています。具体的な年齢に決まりはありませんが、臨床試験では65歳以上となっていたことから65歳が一つの目安になるでしょう。

スボレキサントの相互作用 薬の飲み合わせに関して

スボレキサントが代謝される際には、主にCYP3Aが関与し、CYP2C19もわずかに関与しています。そのため、CYP3Aに関連した相互作用に注意が必要です。

併用禁忌薬

CYP3Aを強く阻害する薬剤は併用禁忌となっているため注意が必要です。

CYP3Aを強く阻害する薬剤には以下のようなものがあります

イトラコナゾール(イトリゾール)
クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス、マインベース)
リトナビル(ノービア)、サキナビル(インビラーゼ)、ネルフィナビル(ビラセプト)、インジナビル(クリキシバン)
テラプレビル(テラビック)
ボリコナゾール(ブイフェンド)など

スボレキサント(ベルソムラ)服用中の患者が風邪を引いてクラリスロマイシン処方されるケースなんかもありそうで油断できませんね。ピロリ除菌用の合剤(ボノサップパックやラベキュアパック)にもクラリスロマイシンが入っていたりするので注意しましょう。

CYP3Aを阻害する薬剤との併用

スボレキサント(20mg単回)とジルチアゼム(240mg 1 日1 回反復)を併用した際、スボレキサントのCmax及びAUCは22%及び105%増加した。

CYP3Aを阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあります。これらの薬剤を併用する場合は1 日1 回10mgへの減量を考慮するなど慎重な投与が必要となっています。

最高血中濃度(Cmax)の伸びは思ったよりあまりありませんが、AUC(体に入る薬剤量)は2倍程度になるため、やはり注意は必要でしょう。

CYP3Aを誘導する薬剤との併用

スボレキサント(40mg単回)とリファンピシン(600mg 1 日1 回反復)を併用した際、スボレキサントのCmax及びAUCは64%及び88%減少した。

との報告から、併用する場合は十分な効果はないと考えられます。ただし、代謝は個人差や条件による差が大きいため、併用する場合は、効果がなければやめるという選択肢になるのではないでしょうか。

CYP3Aを誘導する薬剤には以下のようなものがあります

リファンピシン(リファジン)

食事の影響

食後に服用すると、空腹時に比べて服用直後のスボレキサントの血漿中濃度が低下することがあります。そのため、入眠効果の発現が遅れるおそれがあり、食事と同時又は食直後の服用は避けることとされています。ただし、AUCはほとんど変わりなく上昇するため効果がなくなるというわけではないと考えられます。

腎機能による調整

重度腎機能障害患者(CLcr:30mL/min/1. 73m2以下)に本剤20mgを単回投与した後のスボレキサントのCmax及びAUCは、健康成人と比較して15%及び22%高かった。

との報告から、念のため注意する必要はあっても、減量までの必要はないと考えます。

肝機能による調整

中等度肝機能障害患者(Child-Pughスコア7~9)に本剤20mgを単回投与した後のスボレキサントのCmaxは、健康成人と比較して6%低く、AUCは3%高かった。重度肝機能障害患者(Child-Pughスコア10~15)での薬物動態は検討していない。

との報告から、中等度の肝機能障害では気にする必要はないでしょう。ただ、やはり念のため注意といったところでしょう。重度では慎重投与といったところだと考えます。

スボレキサントの服用方法 使い方や注意点

使い方

入眠効果、睡眠維持効果の両方を併せ持つため、寝付きの悪い患者、夜中に起きる中途覚醒に悩む患者ともに使用できます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬と違い依存性、耐性形成はなく、認知機能への影響、せん妄の誘発もないため半減期の長さを除いては使用しやすい薬剤と考えられます。

ただ、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は強制的に睡眠誘導するのに対し、自然な眠りに近いと考えられるため切れ味としては劣るように思います。

服用する時間はいつが良いか

床に入る前に飲みましょう。寝る1-2時間前に服用するように指示されて出されている場合もあります。確かに、Tmaxが1hrであることを考えると、この早目に飲む飲み方も理に適っているように思われます。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬からの切り替え

ベンゾジアゼピン受容体作動薬と比べ、作用機序からは自然な眠りを促す薬剤です。基本的にはすっと眠りに落ちるような感じではないと考えられ、切り替えの際は効果を実感しにくい場合があるようです。私は睡眠の感覚に違いがあるであろうことを説明するようにしています。

また、反跳性不眠や退薬症状に注意し、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を漸減(例えば4分の1ずつ減量など)しながら切り替えていくなど、急な切り替えは避けるのが良いでしょう。

機械の操作、自動車の運転に関する注意

作用時間は長く、影響が服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることは十分に考えられるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作は避ける必要があるでしょう。

スボレキサント服薬指導時の確認するポイント

・1日1回寝る前に服用すること

・危険を伴う機械の操作は避ける必要があること

・ベンゾジアゼピン受容体作動薬を使用しているもしくは使用していた患者に対しては特に、服用感が違い、自然な睡眠を促す薬剤であることを伝える

・腎機能確認・用量調整の必要性チェック

・併用禁忌薬が無いかの確認