選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬として日本で初めて注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の承認を取得したお薬である、グアンファシン塩酸塩:Guanfacine Hydrochloride(インチュニブ®)の作用機序、注意点、それから指導のポイントについてお話ししていきます。
基本情報
効能・効果 小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
小児期(6歳以上18歳未満)のAD/HD患者が適応で、成人期AD/HD患者の治療薬と
しては承認されていない。
用法:1日1回
用量:下表のようになる
体重 | 開始用量 | 維持用量 | 最高用量 |
17kg以上25kg未満 | 1mg | 1mg | 2mg |
25kg以上34kg未満 | 1mg | 2mg | 3mg |
34kg以上38kg未満 | 1mg | 2mg | 4mg |
38kg以上42kg未満 | 1mg | 3mg | 4mg |
42kg以上50kg未満 | 1mg | 3mg | 5mg |
50kg以上63kg未満 | 2mg | 4mg | 6mg |
63kg以上75kg未満 | 2mg | 5mg | 6mg |
75kg以上 | 2mg | 6mg | 6mg |
Tmax 5hr
半減期 18.4hr(成人男性によるインチュニブ単回投与時)
特徴
1日1回経口投与の非中枢刺激薬であり前シナプスからのドパミンとノルアドレナリンの遊離促進あるいは再取り込みを阻害する作用はないとされています。
効果発現までには少し時間がかかり、1週間から2週間程度かかります。
作用機序
AD/HDに対するグアンファシン塩酸塩の作用機序はまだ明確ではない。非中枢刺激薬であり前シナプスからのドパミンとノルアドレナリンの遊離促進あるいは再取り込みを阻害する作用はないとされています。
グアンファシン塩酸塩は前頭前皮質の錐体細胞の後シナプスに存在しているノルアドレナリンの受容体であるα2A受容体を選択的に刺激することでシグナル伝達を増強させる(ラット)。
AD/HDの前頭前皮質では、ノルアドレナリン作動性神経伝達の調節異常が生じている可能性が考えられているため、α2A受容体選択的に刺激することで効果を示していることが示唆されています。
主な副作用
承認時に認められた主な副作用は傾眠(57.5%)、血圧低下(15.4%)、頭痛(12.2%)。
重大な副作用として低血圧(5%以上)、徐脈(5%以上)、失神(頻度不明)、房室ブロック(0.5%未満)が報告されています。
高度な血圧低下及び脈拍数減少を認め、失神に至る場合もあるため、血圧や脈拍数の定期的な測定が必要となります。脱水になるとそういった症状を助長する可能性もあるので、脱水には十分注意し、脱水が見られた際にはミネラルを含んだ水分摂取など心がけましょう。
投与開始前、用量変更時(1~2週間後)、維持期間(4週に1回を目安に)は血圧及び脈拍数を定期的に測定しましょう。
減量時の注意点
AD/HD症状の悪化が認められた場合、最高用量まで増量し十分な観察期間を設けたがAD/HD症状の改善が認められない場合、重篤又は臨床上重要な副作用が発現し減量できない又は減量が適切でないと考えられる場合、その他の理由により,薬物療法からの離脱を検討する場合には投与の中断、中止を検討すべきとされていますが、急な減量や中止によって血圧上昇や頻脈があらわれることがあり海外において高血圧性脳症に至った報告があるため、中止時には漸減が必要とされています。
中止する際は、原則として3日間以上の間隔をあけて1 mgずつ減量し、血圧や脈拍数を測定しながら徐々に減量していきます。
腎機能に伴ためう調整
肝臓と腎臓の両方を介して消失するが、重度の腎機能障害のある患者では血中濃度が上昇する可能性があるため、重度の腎機能障害のある患者には、体重が50 kg以上であっても1 mgより投与を開始するなどの慎重投与が望ましい。
指導のポイント
- 効果発現までには1週間から2週間程度と少し時間がかかる
- 急な減量や中止によって血圧上昇や頻脈があらわれることがあり中止時には漸減が必要とされているので、勝手にやめないこと
- 高度な血圧低下及び脈拍数減少を認めることがあるため、血圧や脈拍数の定期的な測定が必要
- 頻度の高い副作用としては傾眠、頭痛があげられる
- 急な減量や中止によって血圧上昇や頻脈が現れることもあるので、自己判断で中止などしないように