水虫と薬物療法

ジメジメした季節に再発する水虫。実は日本人の5人に1人が足の水虫(足白癬)、10人に1人は爪の水虫(爪白癬)と言われるほど多くの人が感染しています。

しっかりとお薬を使用することで完治もできる病気の一つなので、水虫について基本的なところから、治療のポイントをお話いたします。

水虫(白癬)とは

水虫の原因である白癬菌は真菌(カビ)の一種で、高温多湿な環境を好み、ケラチンを栄養源として増殖します。ケラチンは角層といわれる皮膚の表面の部分に多く含まれるため、水虫は角層や爪、毛に寄生して病変を生じます。

水虫にどのように感染するか

感染経路としては、感染者から脱落した角層である鱗屑とともにあらゆるところに白癬菌は存在しており、バスマット、スリッパ、床など様々なところがあります。

原因となる菌に接触することで感染しますが、皮膚にはバリア機能があるため、触れるとすぐに感染するわけではなく半日から1日かかるとされています。
感染する前に洗い流すことによって感染を阻止することができます。

特に注意が必要なのが、温泉やプール、シャワールームなどです。これらの場所で体を洗って自宅でお風呂に入らないという方も多いかと思いますが、床やマットなどに触れている足だけでも洗うことが予防には重要です。

実は痒くない水虫

水虫は痒くないというと間違いですが、実は水虫で痒みが出るのは足白癬の10人に1人程度です。必ずしも水虫だからといって痒みがあるわけではないのです。

どのように診断されるのか

見た目で水虫かどうかを判断するのは専門医でも難しいと言われています。正確に診断するためには鏡検で白癬菌を確認することです。

水虫のお薬である抗真菌薬を使用して良くなったから水虫、良くならなかったら水虫ではないという判断も成り立ちません。
ドラッグストアなどでもお薬は売っていますが、ご自身でお薬を買ってそのような判断は避けましょう。

水虫の薬物療法

内服と外用薬がありますが、足や体部では基本的には下の一覧に上げているような外用薬を使用します。頭部、爪、足の角膜増殖型、広範囲の体部などには内服薬が使用されます。
OTC薬にも同じ成分のものがありますが、自己判断で水虫として使用するのではなく、医療機関で水虫と診断されて治療していたけど、外用薬が切れてしまって病院にもかかれないときの使用にとどめたほうが安全です。痒みなどの症状は水虫でないことのほうが多く、水虫の外用薬で悪化することもあるからです。

水虫の抗真菌薬 外用一覧

アリルアミン系
テルビナフィン(ラミシール)
イミダゾール系
ケトコナゾール(ニゾラール)
ネチコナゾール(アトラント)
ビホナゾール(マイコスポール)
ラノコナゾール(アスタット)
ルリコナゾール(ルリコン)
チオカルバミン酸系
リラナフタート(ゼフナート)
ベンジルアミン系
ブテナフィン(メンタックス)
モルホリン系
アモロルフィン(ペキロン)

水虫の内服薬一覧

イトラコナゾール(イトリゾール)
テルビナフィン(ラミシール)
ホスラブコナゾール(ネイリン)
*お薬の「成分名(商品名)」で記載しています。ジェネリック医薬品は成分名が商品名となります。

外用薬の剤形による使い分け

外用薬の剤形にはクリーム、軟膏、液剤、スプレーが存在します。

液剤はベタつきが少なく一般的に塗り心地が良いとされていますが、刺激性は液剤が一番強いとされています。

患者さんの塗り心地の良いものを選択することはもちろん重要ですが、皮膚の状態によっては抗真菌薬の刺激性により接触性皮膚炎をおこし、症状が悪化することがあるので注意が必要です。

炎症反応が強い場合には刺激の少ない軟膏を選択します。皮膚の状態が悪く、軟膏でも難しそうなときはステロイド外用薬や亜鉛華軟膏の外用薬を併用し、皮膚症状の改善を図ります。

外用薬使用時の注意点

特に足白癬での塗り方には注意が必要です。症状が片足のみでも、白癬菌は足の角層全体に感染していると考えられるため、足の指と指の間、足底、足の縁、アキレス腱部全体に薬剤を塗布する必要があります。

両足に塗ると約1g使用します。FTU(Fingertip unit)でいうと2FTUです。塗った部分がテカっとわかるくらいの量を塗りましょう。

1日1回両足に使用すると、30g使用することになります。10gチューブだと3本分です。

FTUとは経口5mmのチューブに入った塗り薬を大人の人差し指の先から第一関節の長さまで出した量のことです。1FTUが0.5g、手のひら2枚分の幹部に塗る量の目安とされています。
さらに、塗る量だけでなく、塗る期間も重要です。
外用薬を塗り始めると白癬菌の増殖が止まり、皮膚のターンオーバーによって白癬菌が表層に押し出されてきます。すると症状が軽快してくるので、この段階でやめてしまうと白癬菌はまだ表層に存在するので再度増殖をはじめ症状が再燃します。このため、症状が軽快してからも1-2ヶ月は治療し、白癬菌を皮膚のターンオーバーにより外に排出する必要があります。
爪白癬の場合は更に時間がかかります。爪の生え変わりには半年から1年かかるため、それくらいの期間の治療継続が必要となります。

まとめ

・水虫の治療薬の外用剤には刺激性があり、かぶれることがあるため注意が必要。
・OTC薬は病院にかかれない水虫の外用薬による治療中の方には効果があるが、自己判断による治療は悪化の原因となることがある。
・外用剤による治療は症状のある部分だけでなく、足全体に塗布する必要がある。
・治療は症状が軽快してからしばらく継続する必要がある。足の水虫なら2-3ヶ月くらい。爪白癬なら半年〜1年程度。
・適切な量をぬる。両足なら1日1g、1ヶ月で30g。