咳の症状などで救急外来や小児科にかかってツロブテロールテープ(ホクナリンテープ)をもらった経験のあるかたも多いのではないでしょうか?
気管支拡張作用をもち、咳や痰を改善してくれるお薬なのでよく使われています。
ツロブテロールテープはホクナリンテープのジェネリック医薬品(後発薬)なので、名前は異なりますが同じものです。
そんなツロブテロールテープに関して基本的なところから使い方、注意点に関してまとめてます。
【基本情報】
一般名:ツロブテロールテープ 英名:Tulobuterol
商品名:ホクナリンテープ
効能・効果 下記疾患の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解
気管支喘息、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫
用法・用量
成人:2 ㎎
小児:0.5~3歳未満→0.5 ㎎、3~9 歳未満→1㎎、9 歳以上→2㎎
1日1回 胸部、背部、上腕部のいずれか1ヶ所に貼付
におい:なし
ツロブテロールテープの貼り方
貼付部位は?どこにはればいい?注意すること
胸部、背部、上腕部のいずれか。貼る場所を乾いたタオル等で拭いて、きれいにした状態で貼りましょう。
皮膚障害(貼付部位の?痒感、紅斑、疼痛、変色など)を避けるために、毎回、貼付部位を変えて貼るのも忘れずに。
貼付部位を変えるといっても、胸部に貼った次の日は背部などとするのではなく、全く同じ場所にならないようにずらして貼ること。
皮膚の状態によって吸収には差はないとされていますが傷口などはさけ、出来る限り状態の良い場所に貼りましょう。
1日1回の貼るタイミングは
基本的にはいつでも良いが、入浴後から寝る前に貼付するのが良いと思います。
なぜかというと、1日のうち深夜から早朝にかけて呼吸機能が低下することが知られていて、特に気管支喘息ではモーニングディップと呼ばれる早朝の呼吸機能低下があらわれます。これが早朝発作を引き起こします。
お風呂にはいったあとはテープが剥がれやすくなったりする場合もあることと、薬剤の最高血中濃度到達時間(8-12時間)を考慮すると、入浴後などが良いのではないかと考えられます。
貼り忘れた場合
貼付後24時間で薬物の90%近くが皮膚吸収されるため、貼り忘れると薬剤の残りは少なく、長時効果を十分に発揮することはできません。
剥離後の半減期は約6時間(2mg単回投与)であるため、すぐに効果がなくなるということはありませんが、気づいた時点で貼り替えましょう。
そして、次回からは決められている時間に貼り替えを行います。
途中ではがれた場合
貼付12時間後に約75%の薬物が吸収されていることから、貼付後12時間以降にはがれた場合では有効性に大きく影響はしないことが考えられています。
貼付後12時間以降にはがれた場合には再貼付する必要はありません。ただ、はがれたものを再貼付はしてもよいでしょう。
切断できる?
ホクナリンテープの仕組みから。結果のみ見たい人は読み飛ばしてください。
ホクナリンテープは膏体中に溶解したツロブテロール分子と均一に分散したツロブテロール結晶を共存させることで、ツロブテロール結晶に薬物貯蔵槽としての機能を持たせ、吸収に伴い、失われたツロブテロール分子をツロブテロール結晶から逐時補給することで、膏体及び皮膚接着表面のツロブテロール濃度を一定に保ち、持続的な薬物放出を可能にしています。
つまり、膏体といわれる薬を混ぜておく部分に、薬の成分が均一に含まれていて、溶けている薬と溶けずに個体として存在している薬がある状態。そして、溶けている薬だけが皮膚から吸収されるので、溶けている薬が吸収されてなくなったら、膏体中の濃度がさがるので、溶けていない薬が溶けて濃度を一定に保つという仕組みだ。
膏体を切ることで薬剤が出てくるわけではないので切断は可能。ただ、切断面から剥がれやすくなること、切断しての使用することによるメリットはあまりないためお勧めしない。
高齢者への投与量
明確に確立された用量基準はない。場合によっては通常1日1回2mgのところを1mgから開始することもあるようだが基本的には1日1回2mgとされている。
小児への投与量と体重の目安
小児での投与量は年齢で0.5~3歳未満→0.5 ㎎、3~9 歳未満→1㎎、9 歳以上→2㎎となっています。
年齢で投与量が分けてあるけれど、体重には個人差があるもの。年齢通りの投与量で本当に大丈夫?と不安に思う方もいるかと思います。基本的には問題は無いと考えられますが、小児の平均体重から目安を考えることもできます。
体重15㎏未満には0.5㎎
体重15~30kg未満には1mg
体重30kg以上には2mg
あくまで目安ですので参考に。
薬を貼ったまま入浴しても大丈夫?
水を通さないようにされており薬剤が溶け出すことはないため、お風呂、海、川、プールなど特に影響はないと考えられますが、剥がれやすくなることはあるため注意が必要です。
ツロブテロールテープはすぐに効果が出るのか?
最高血中濃度到達時間が8-12時間であることから、しばらくして効果が見られると予想されます。即効性はありません。
【作用機序】
気管支平滑筋のβ2受容体に作用してAdenyl cyclaseを賦活化。それにより、細胞内のATPがcyclicAMPに変化し気管支拡張作用を示します。
気管支平滑筋の収縮をおさえ咳反射を抑制し、狭くなっている気管支が広がるため息苦しさが改善されます。さらに、痰などの分泌物を排出する働きもあります。
【主な副作用と対策】
振戦、心悸亢進、動悸、そう痒症・適用部位そう痒感、接触性皮膚炎
副作用症状が強ければ相談すること。半減期は6時間程度あるので、振戦や動悸であれば薬剤を剥がしてから徐々に消失していくと考えられる。
【まとめ】
経皮時間制御送達システムによって薬剤の吸収を一定に保っている薬剤で、1 日1 回貼付で、経口・吸入投与が困難な患者にも投与が可能な薬剤。
モーニングディップを抑制 (就寝前貼)したり、ピークフロー値を改善、急性・慢性気管支炎のせき・たんの改善が期待できます。