ミラベクロン(ベタニス)の特徴、使い方や注意点、作用機序や指導のポイントについて

泌尿器科薬

過活動膀胱などに対する治療薬の中で、ベオーバ®が出る前まではミラベクロン(ベタニス®)が本邦唯一のβ3アドレナリン受容体刺激作用のある薬剤でした。

腎機能、肝機能、心疾患、食事、併用薬など、意外と注意する点が多い薬剤ですが、本邦で実臨床で使われてきた実績や、同効薬である抗コリン作用のある薬剤では認知機能へ影響する場合もあるため、これからも選択肢となりえる薬剤でだと考えています。

ここからはそんなミラベクロン(ベタニス®)について基本的なところから説明していきます。

【基本情報】

効能・効果 過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
用法・用量 1日1回食後50mg

Tmax 3.5hr(50mg単回投与)
半減期 36.4hr(50mg単回投与)

腎機能による調整 あり
肝機能による調整 あり
食事の影響 あり
併用禁忌薬 あり
禁忌疾患等 あり

一包化は可能か?

可能です

粉砕は可能か?

まだ後発品はありませんが、ベタニスに関しては徐放性製剤であるため、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないできません。

粉砕はできません。

【作用機序】

膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善します。

効果発現時期

半減期からすると血中濃度が定常状態となるのは7日前後であり、少なくとも1週間から2週間は効果を見ていかないと評価はできないと考えます。

臨床試験では1日1回食後に服用し、12週間投与後に評価して効果が確認されています。

そういった意味では、速効性はあまり期待せずにじっくりと効果を見ていく必要があるでしょう。

【主な副作用と対策】

主な副作用は便秘、口内乾燥、AST、ALT、γGTP、AL-P、CK上昇、尿沈渣異常、尿中タンパク陽性などです。

症状が強く出た場合は中止を考慮します。

腎機能による調整

軽度の腎機能障害(eGFR60~89mL/min/1.73m2)を持つ患者では、健康成人と比べて本剤100mg注)投与時Cmax及びAUCinfがそれぞれ1.06倍及び1.31倍高かった。中等度の腎機能障害(eGFR30~59mL/min/1.73m2)を持つ患者では、健康成人と比べてCmax及びAUCinfが1.23倍及び1.66倍高かった。重度の腎機能障害(eGFR15~29mL/min/1.73m2)を持つ患者では、健康成人と比べてCmax及びAUCinfが1.92倍及び2.18倍高かった。

軽度や中等度の腎機能障害でもAUCの増加がみられ、高度の腎機能障害になるとAUCが2倍以上となっています。腎機能障害がある場合は副作用が出現しやすくなる可能性があるので注意しましょう。

また、このことから、重度の腎機能障害患者(eGFR15~29mL/min/ 1.73m2)への投与は1日1回25mgから開始することとなっています。

肝機能による調整

軽度の肝機能障害(Child-Pughスコア5~6)を持つ患者では、本剤100mg注)投与時のCmax及びAUCinfは健康成人に比べてそれぞれ1.09倍及び1.19倍高かった。中等度の肝機能障害(Child-Pughスコア7 ~ 9 )を持つ患者では、本剤100mg注)投与時のCmax及びAUCinfは健康成人に比べてそれぞれ2.75倍及び1.65倍高かった。

軽度の肝機能障害では、AUCへの大きな変化はありませんが、中等度になるとCmaxは3倍近くになり、AUCも明らかに増加しています。

高度になるとCmaxがより高くなるのではないかと考えられます。ちなみに、高度肝機能障害では禁忌です。

AUCに関しては腎からも排泄される薬剤のためこの程度の増加におさまっているのではないかと思います。

中等度の肝機能障害患者(Child-Pughスコア7 ~9)への投与は1日1回25mgから開始することとされているので、注意しましょう。

食事の影響

本剤25mg、50mg及び100mgを単回経口投与したときの絶対バイオアべイラビリティはそれぞれ28.9%、35.4%及び45.0%であった。高脂肪食食後に投与したときに比べ空腹時投与で本剤血漿中濃度が高くなり、本剤50mg及び100mgを空腹時に投与したときのCmaxは2.11倍及び1.95倍に増加した。AUClastは1.47倍及び1.40倍に増加した。

空腹時に服用した場合、血中濃度が一時的に上昇し、体の中に入るお薬の量も増えます。副作用のリスクは高くなるので、食後に飲むことを心がけましょう。

相互作用

主としてエステラーゼによって加水分解を受け、一部はCYP及びグルクロン酸抱合酵素によっても代謝されます。

一部が薬物代謝酵素CYP3A4により代謝され、CYP2D6を中等度に阻害する作用もあります。また、P-糖蛋白の基質であり、P-糖蛋白阻害作用ももちます。

併用禁忌

フレカイニド酢酸塩(タンボコール)
プロパフェノン塩酸塩(プロノン)
ともに催不整脈作用があり、またミラベクロンのCYP2D6阻害作用によってこれらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性があることから、QT延長、心室性不整脈(Torsadesde Pointesを含む)等を起こすおそれがあるため禁忌となっています。

併用注意

カテコールアミン アドレナリン、イソプレナリン等

カテコールアミンの併用によりアドレナリン作動性神経刺激の増大が起こり、頻脈、心室細動発現の危険性が増大します。

 

CYP3A阻害剤

ケトコナゾール

イトラコナゾール

リトナビル

アタザナビル

インジナビル
ネルフィナビル
サキナビル
クラリスロマイシン

ミラベクロン100mgとケトコナゾール400mgと併用したとき、ミラベクロンのAUCinfは1.81倍に上昇した

このように、ミラベクロンのAUCが上昇し、心拍数増加等があらわれるおそれがあります。

CYP3A誘導剤

リファンピシン
ミラベクロン100mgとリファンピシン600mgと併用したとき、本剤のAUCinfは0.56倍に減少した

リファンピシン
フェニトイン
カルバマゼピン

これらの薬剤はCYP3A4及びP-糖蛋白を誘導し、併用によりミラベクロンの血中濃度が低下し、作用が減弱する可能性があります。

CYP2D6の基質

ミラベクロン100mgとデシプラミン50mgと併用したとき、デシプラミンのAUCinfは併用により3.41倍に上昇した

デシプラミン
デ キストロメトルファン
フェノチアジン系抗精神病剤
ペルフェナジン
ドネペジル等
三環系抗うつ剤
アミトリプチリン塩酸塩
ノルトリプチリン塩酸塩
イミプラミン塩酸塩等

ミラベクロンのCYP2D6阻害作用により、これらの薬剤又はその活性代謝物の血中濃度が上昇する可能性があり注意が必要です。

メトプロロール

メトプロロール
ミラベグロン160mg(IRカプセル)注)とメトプロロール100mgと併用したとき、メトプロロールのAUCinfは3.29倍に上昇した

本剤のCYP2D6阻害作用により、薬剤又はその活性代謝物の血中濃度が上昇する可能性がある。

ピモジド
QT 延長、心室性不整脈(Torsadesde Pointesを含む)等を起こすおそれがある。
本剤のCYP2D6阻害作用により、ピモジドの血中濃度が上昇する可能性があり、かつ本剤及びピモジドがともに催不整脈作用を有する。

ジゴキシン
併用する場合には、ジゴキシンの血中濃度をモニタリングすることが望ましい。本剤のP-糖蛋白阻害作用により、ジゴキシンの血中濃度が上昇する可能性がある。

生殖能への影響

警告に生殖能への影響の注意がきがあります。

生殖可能な年齢の患者への本剤の投与はできる限り避けること。動物実験(ラット)で、精嚢、前立腺及び子宮の重量低値あるいは萎縮等の生殖器系への影響が認められ、高用量では発情休止期の延長、黄体数の減少に伴う着床数及び生存胎児数の減少が認められている。

動物実験によるものですが十分な注意が必要です。このようなこともあり、妊婦、妊娠している可能性のある女性・授乳婦では禁忌となっています。

禁忌疾患等

・重篤な心疾患を有する患者[心拍数増加等が報告されており、症状が悪化するおそれがある。]
・妊婦及び妊娠している可能性のある女性
・授乳婦
・重度の肝機能障害患者(Child-Pughスコア10以上)

妊婦・授乳婦への影響

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には禁忌です。

動物実験(ラット、ウサギ)で、胎児において着床後死亡率の増加、体重低値、肩甲骨等の屈曲及び波状肋骨の増加、骨化遅延(胸骨分節、中手骨、中節骨等の骨化数低値)、大動脈の拡張及び巨心の増加、肺副葉欠損が認められている。

授乳婦には禁忌です。授乳は避けましょう。

動物実験(ラット)で乳汁移行が認められている。また、授乳期に本薬を母動物に投与した場合、出生児で生存率の低値及び体重増加抑制が認められている。

使用上の注意点

・下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者では、それに対する治療(α1遮断薬等)を優先させる。

・過活動膀胱の適応を有する抗コリン剤と併用する際は尿閉などの副作用の発現に注意する。

・ステロイド合成・代謝系への作用を有する5α還元酵素阻害薬と併用した際の安全性及び臨床効果が確認されていないため併用は避けることが望ましい。

・血圧の上昇があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血圧測定を行いましょう。

・心血管系障害を有する患者
投与を開始する前に心電図検査を実施するなどし、心血管系の状態に注意をはらうこと。QT延長を生じるおそれがあります。

・QT延長又は不整脈の既往歴を有する患者

定期的に心電図検査を行うこと。QT延長を来すリスクが高いと考えられるため。

・クラスⅠA(キニジン、プロカインアミド等)、クラスⅢ(アミオダロン、ソタロール等)の抗不整脈薬を投与中の患者を含むQT延長症候群患者
定期的に心電図検査を行うこと。QT延長を来すリスクが高いと考えられるため。

・重度の徐脈等の不整脈、急性心筋虚血等の不整脈を起こしやすい患者
心室頻拍(Torsades de Pointesを含む)、QT延長を起こすことがあるため。

・低カリウム血症のある患者

心室頻拍(Torsades de Pointesを含む)、QT延長を起こすことがあるため。

・緑内障の患者
定期的な眼科的診察を行うこと。眼圧の上昇を招き、症状を悪化させるおそれがあるため。

 

指導のポイント

・用法用量の説明  1日1回食後

・徐放性製剤の説明(割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用)

・既往の確認

QT延長、不整脈、心血管系障害の患者ではQT延長などを起こすおそれがあり注意。また、緑内障も悪化に注意。定期的な検査が望ましいです。外来の場合はそもそもこれらの疾患を持つ患者は定期的に検査を受けていると思いますが、入院などが長期になると検査を受けていないケースもあるかと思います。悪化の初期症状に気付いた際は検査を促しましょう。

・腎機能、肝機能、カリウム値の確認

・併用薬の確認

CYP2D6の基質となる薬剤との併用は特に注意する。

 

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